2009年4月以降、発生と拡大が報じられた新型インフルエンザ。いったんは沈静化したものの、今秋以降に予想される第二波に備え、抗インフルエンザ薬の備蓄やワクチン開発が進んでいる。そうした中、国立感染症研究所がインフルエンザをはじめとする感染症の発生・流行を早期に検知するシステムを構築した。

写真1●感染症流行探知サービスの画面例
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 国立感染症研究所の感染症情報センターが構築したのは「感染症流行探知サービス」。2009年4月から運用を開始している。全国の保険薬局から医薬品の投薬情報を収集し、特定の医薬品を受け取った患者数から、感染症の発生地域を特定する(写真1)。

 感染症情報センターの大日康史主任研究官は、「感染症の発生を早期に発見し、的確に注意喚起できれば、感染拡大を抑える有効な対策の一つとなる」と、感染症流行探知サービスへの期待を話す。インフルエンザのように季節性がある感染症の場合は、例年の流行時期と照らし合わせて流行するのが早いのか遅いのかが分かれば、医療機関に対し詳細な検査を実施するよううながすことも可能になる。

発生・流行のレベルを3段階に分類

 感染症の発生情報は、病院や診療所からの報告が徹底できれば、早期に収集できる。しかし、医薬品が処方されるたびに、電話やファクスといった手段だけで、それらの情報を一元管理することは難しい。投薬情報を自動的に収集できる仕組みを作ることが、感染症の発生・流行を早期に検知につながる。この5月以降、新型インフルエンザの発生が確認された際には、京都で2例目の感染が見つかる前日に、同地域でタミフルの処方があったことを同システムでは確認できていたという。

写真2●発生・流行地域をドリルダウンしたときの画面例
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 探知サービスでは、発生・流行のレベルを3段階に分けている。各地域の患者数に対して、特定の医薬品を受け取った患者数の割合が10%~20%の地域が「レベル1」、20%~30%は「レベル2」、30%以上は「レベル3」である。同サービスのシステム画面上では、日本地図を各地域のレベルに応じて、それぞれグレー、オレンジ、レッドで塗り分けて表示する。

 発生・流行地域は、都道府県単位から保健所単位にまでドリルダウンできる(写真2)。そこでは医薬品を受け取った患者の状況を、患者の年齢層別や医薬品別に一覧表示できる。年齢区分は、15歳以下、16歳~64歳、65歳以上の三つ、医薬品分類は、解熱鎮痛剤、総合かぜ薬、抗生物質、抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザなどがある。