データセンターでは,システム運用にかかわる各種サービスを提供しています。主なものに,「監視サービス」「運用(代行)サービス」「障害復旧サービス」があります。各サービスの概要を紹介するとともに,それらサービスの活用が運用コスト削減にどのように結びつくのか見ていきます。

24時間365日の監視サービス

 監視サービスとは,データセンターで預かっているシステムやホスティング・システムの状態を24時間365日,監視し続けるサービスのことです。監視サービスを提供するため,データセンター事業者は「監視センター」などと呼ぶ,監視の専門組織を設けています。

 監視対象は,サーバーやネットワーク機器,回線,電源設備などさまざまです。例えば,サーバーの死活監視やサービス監視,ログ監視などについては,利用企業の要望に沿って実施します。それにより,真夜中にサーバーがダウンしたり,ネットワーク機器に障害が発生したりしても,早期に対処できるようになります。朝会社に来てみたらメール・サーバーが止まっていた,というような問題は基本的になくなります。

 24時間365日の監視をするには,監視システムの構築コストに加え,ネットワークから基盤技術,主要なインターネット・アプリケーションなどさまざまな技術に精通した監視チームの人件費がかかります。企業が独自に24時間365日の監視をするとしたらコストは膨大になりますが,データセンターの監視サービスは多くの企業が利用する共用サービスですので,1社当たりのコストに直すとさほど高価にならないのです。

定常業務の運用代行サービス

 本来は毎日実施されるべきバックアップ・テープの交換が,担当者に急用が発生するなどして実施されなかったことはありませんか。そうしたシステム運用の一環として行われる定常業務も,データセンターの運用チームに依頼すれば,確実に実施されるようになります。このほか,サーバーやネットワーク機器のLEDの目視確認やサーバーの再起動,設定作業を多数のサーバーに対して施すといった容易なものから手間のかかるものまで,幅広い運用作業をデータセンターに任せることが可能です(図3)。サーバー運用のために人手を割くよりも,データセンターの運用代行サービスを利用した方が,TCO(Total Cost of Ownership)が下がることが多いようです。

図3●運用(代行)サービスをうまく利用すれば,TCOが下がる
図3●運用(代行)サービスをうまく利用すれば,TCOが下がる

障害復旧サービスの内容を事前確認

 障害復旧サービスでは,ハードウエアが故障した際にパーツを交換したり,OSやソフトウエアに障害が起きた際に再インストールなどの復旧作業を行ったりします。データセンター事業者によって,障害復旧サービスの内容やレベルが異なることがありますので,契約前にサービス内容をよく確認することを勧めます。

 障害発生を事前に予知したり,利用増加によるシステム増強やリプレース時期を予測したりできるよう,サーバーの状態や障害発生状況について定期的に調査し,レポートするサービスも多くのデータセンター事業者が用意しています。例えば,メモリーやディスク,CPUなどリソースの利用状況,トラフィック状況,稼働率,障害履歴などのレポートが示されます。

 なお,データセンターが提供するサービスは日々充実するとともに,各サービスの内容が進化しています。運用管理者の方々が負担に思っていることがあれば,こんなサービスはないの,とデータセンターに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

データセンターで火災が起きたら?

 データセンターには,サーバーやネットワーク機器などの精密機器が多数並んでいます。このため,仮に火災が起きたとしても,水などの液体を用いて消火することは許されません。そこで多くのデータセンターでは,二酸化炭素や窒素などの不活性ガスを噴射する,「不活性ガス消火設備」を導入しています。

 煙感知器が火災を察知すると,館内を巡るガス管を通じて不活性ガスが噴射されます。燃焼に必要な酸素の濃度を低下させて消火するのです。不活性ガスが噴射されると酸素濃度が下がりますので,噴射に先立ってデータセンター内にいる人をすべて退避させます。私自身は幸いにもそのような場面に遭遇したことはありませんが,データセンターで働く人には,「逃げ足の速さ」が必要なのかもしれませんね。

川上 剛
リコーテクノシステムズ ITマネージド本部 EMS運用センター シェアードサービス部 ISP/ASP運用グループ リーダー
ISP/ASP運用グループは,リコーのプロバイダ事業(インターネット接続サービス,ホスティング・サービス)の運用管理を担当している。筆者は,リコーのプロバイダ事業創成期からのメンバーで,リコーのデータセンター創設メンバーでもある。ISP/ASP運用グループのリーダーとして,数十万に上るリコーITサービスのユーザーのために,今日もサービスの前線に立ち続けている。