WILLCOM CORE XGPの最大伝送速度は20.5Mビット/秒である。今回はXGPの伝送速度に関する技術を解説しよう。

 XGPの下り方向の伝送速度は、端末における電波の受信環境によって変わる。電波環境がいいほど,より高速なデータ伝送が可能だ。具体的には変調方式や誤り訂正の符号化率を変化させることで,その時々の電波環境で最も高速な伝送方式を選択する。これはモバイルWiMAX,LTEといった他のモバイル・ブロードバンド規格も同様だ。

 XGPで採用している変調方式と誤り訂正の符号化率の組み合わせを表2-1にまとめた。XGPでは上りと下りで全く同じ組み合わせを採用していることがわかる。なお,上りと下りで伝送速度の違いがあるのは,下りではガード・キャリアと呼ぶ干渉防止のための帯域もデータ伝送に使うしくみ(PRU連結)を採用しているからである。このしくみについては次回解説する。

表2-1●WILLCOM CORE XGPの最大伝送速度と変調方式/符号化率の関係
下り方向(基地局から端末へ)と上り方向(端末から基地局へ)それぞれについて示した。
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表2-1●WILLCOM CORE XGPの最大伝送速度と変調方式/符号化率の関係<br>下り方向(基地局から端末へ)と上り方向(端末から基地局へ)それぞれについて示した。

五つの変調方式を採用

 WILLCOM CORE XGPの変調方式は,BPSK,QPSK,16QAM,64QAM,256QAMである。各変調方式の違いは,一つのシンボル(伝送の単位)で何ビット運べるかということにある。それぞれBPSKは1ビット,QPSKは2ビット,16QAMは4ビット,64QAMは6ビット,256QAMは8ビットとなる(図2-1)。つまりシンボルを送る速度が同じなら,256QAMが選択されたときに伝送速度は最も速くなる。

図2-1●モバイル・ブロードバンドの各規格で採用する多値変調方式<br>XGPは他の規格と比べて,より高速な伝送が可能な256QAMを採用している。
図2-1●モバイル・ブロードバンドの各規格で採用する多値変調方式
XGPは他の規格と比べて,より高速な伝送が可能な256QAMを採用している。
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 図2-1に示したように,XGPは他のモバイル・ブロードバンド規格と比べて採用している変調方式の種類が多い。これは,時々刻々と変わる端末における電波環境に応じて,できるだけ高速にかつ安定したデータ通信サービスを提供できるようにするためだ。PHSから引き続き採用しているBPSKではより安定した通信を,XGPで新たに採用した256QAMでは20Mビット/秒という高速な通信をそれぞれ実現することができる。