安部 俊一 氏
ボーランド サービス本部 シニア・コンサルタント
安部 俊一 氏

 デベロッパーリレーションの仕事は,自社の製品を使うソフトウエア開発者(デベロッパー)を支援することだ。仕事上でかかわる相手はもっぱら開発者となるため,ソフトウエアの開発に携わらない人には馴染みが薄いかもしれない。だが,開発者にとってみれば,極めて身近で心強い存在である。開発者を支援したい思いが強い人には,魅力的な職業となるに違いない。

 開発ツールベンダーのボーランドでデベロッパーリレーションの仕事をしている安部 俊一氏は,元々はソフトウエア開発者だった。ITベンダー数社でツールや業務アプリケーションの開発に従事したのち,2001年にボーランドに入社した。開発者をしていた経験の中で,安部氏が実感したのは開発支援ツールの重要性だった。

 安部氏は「ソフトウエア開発の世界はハードウエアと比べて進化が遅く,旧態依然のやり方や考え方で進められていました」と振り返る。開発支援ツールがまだ普及していなかったこともあり,「職人的なエンジニアが属人的に支えてきた」時代で,開発者たちはみな苦労していた。

 そんな安部氏が可能性を見いだしたのが開発支援ツールである。開発支援ツールをうまく活用すれば,優れた開発プロセスや開発技術を導入できるだけでなく,明文化した形で開発業務を定着させられる。こうした“ソフトウエア開発の近代化”にやりがいを感じたのが,安部氏がデベロッパーリレーションという仕事に就いた動機である。

 安部氏の日常業務は,一言でいうと「自社製品(開発支援ツール)を顧客(システムインテグレータなどの開発者)に導入するコンサルティング」となる。具体的な仕事の内容は,小さいところでは個々のツールの導入や使い方の指南,大きなところでは開発プロセスや組織の改善提案まで,幅広くカバーする。

変化に対して前向きになろう

 この仕事に必要なスキルとして安部氏は,顧客の要望を把握するためのコミュニケーションスキルを挙げる。このスキルは,顧客の要望を把握したり,顧客を説得したりするために欠かせない。いくら良いスタイルを提案しても,相手に理解されなければ意味がない。

 さらに,より重要なスキルとして,安部氏は「変化に前向きなマインド」を挙げる。「テクノロジも,テクノロジを適用する場面も,時代に応じて変わるのです。過去にしがみつくのではなく,変化に対応できることが何よりも重要です」(安部氏)。

 もちろん開発支援ツールを使ってもらう顧客にも「変化に前向きなマインド」は必要となる。主役である顧客が変わらなければ,提案が通らない。

 このため,安部氏は「開発者を説得してマインドの変化を促すこともデベロッパーリレーションの大切な仕事」と語る。「開発とは,こうあるべき」という理想的かつ実践的なスタイルを顧客に提案するのである。単に製品を売り込むだけでなく,客観的にモノを見るコンサルタントとしての視点を持つことで,顧客にとって何が適切な提案なのかが,見えてくる。

お仕事解説:デベロッパーリレーション

自社製品を使う開発者をサポート

 ソフトウエアの開発者を支援するのが仕事。安部氏のように開発ツールベンダーに勤務する場合は,自社が提供する統合開発環境や開発工程管理ツールなどを使う開発者(ソフトウエア開発会社)をサポートする。扱うツールのカバー範囲などにもよるが,大きなところでは,開発プロジェクトの改善提案までもカバーする。また,ハードウエアやOSのような基本ソフト,アプリケーションソフトなどを提供する会社では,自社の製品と一緒に使うソフトの開発者を支援する。

必要なスキル

  • コミュニケーションスキル
    顧客の要望を把握したり,顧客を説得したりするために必要。
  • 豊富な「経験」と「知識」
    業務視点や技術パターンの種類を増やせば提案の幅が広がる。
  • 変化を恐れない柔軟なマインド
    成功例にしがみつかずに,より良い案を提案するのに必要。