奇妙なことだが米Microsoftは,当初の計画通り次期クライアントOS「Windows 7」が完成したことを2009年7月13日(米国時間)に発表しない道を選択した。その代わり,パートナ向けリリースを7月末までに開始するという,以前から公表していたスケジュールを守ることにした。

 このような選択をした舞台裏は至って単純で,言葉の使い方の問題だ。Microsoftはほんの数日前,7月10日にWindows 7の最終ビルド「7600」を作り終えた。ただし通常の作業手順に従い,完成から2週間かけてこのビルドをテストする。必要があれば,さらに小規模なテストを繰り返す。なお,こうした反復テストは既に実行されたらしい。テストを繰り返しても,ビルド番号は変更しない。

開発者向けには8月中旬から提供を開始

 Microsoft上級副社長のBill Veghte氏は7月13日に行ったパートナ向け年次会議「Worldwide Partner Conference(WPC)」の基調講演の中で,Windows 7の製造段階(RTM:Release To Manufacturing)移行時期を「今月」とぼやかした。ところが,講演記録には「今朝」(すなわち7月13日の午前中)という発言が記載されている。これは,「MicrosoftがWindows 7を完成させるであろう」として広く報道されていた日付である。

 同社はRTM以降の発表を見送っただけでなく,Windows 7のRTM版に関するうわさを広めているブロガーまで非難した。同社の関係者はWindows 7公式ブログへの投稿記事で「インターネットで得た情報を鵜呑みにしてはいけない。(開発)プロセスは時間がかかるものなのだ」と指摘している。

 Windows 7のRTM版を取り巻く不可解な状況はともかく,同社はこれまでより若干詳しいリリース情報を出した。MSDN/TechNet会員向け提供はRTM以降の発表後「数週間」で始めるという。つまり,8月の中旬になるだろう。ボリューム・ライセンス契約者向け提供は,一般発売より2カ月弱早い9月1日に開始する。Microsoftとパートナは「Windows 7 Home Premium」と「同Professional」を期間限定サービスで実施していたが,「Windows Vista」へアップグレードした企業ユーザーにも15~35%の割り引き価格でWindows 7を販売する(関連記事:Windows 7を50ドルで格安販売,USBメモリー版の計画も)。

Windows 7の登場が経済を活性化する

 同社はWindows 7の販売見通しが明るいことも強調した。伸び悩んでいるといわれるWindows Vistaと違い(実際のところ,同じ期間で比べるとWindows VistaとWindows XPの販売数は大差ない),Windows 7は好スタートを切るはずだ。調査会社の米IDCは,2010年末までに販売されるWindows 7のライセンス数を1億7700万本と予測した。これは,発売から1年弱でMacintoshユーザー数の6倍近く売れることになる。

 Windows 7の成功で恩恵を得るのはMicrosoftにとどまらない。IDCによると,Windows 7が2010年末までにMicrosoftの製品/サービス・パートナにもたらす売上高は3200億ドルという。さらにIDCは,こうしたパートナの多くが中小企業で,収益のほとんどが地元に還元され,地域経済の推進力として使われるとした。要するに,Windows 7は発売から15カ月にわたって景気回復を後押しするのだ。IDCは「Windows 7そのものが緊急経済対策」としている。

関連記事(英文):

・「What You Need to Be Ready for Windows 7」(「Windows 7導入に必要なこと」)
・「Pricing Malfunction: How Microsoft Will Bungle the Windows 7 Launch」(「価格設定の失敗:Windows 7発売のつまずき方」)
・「Microsoft Views: Windows 7 IT Pro Features and Developments」(「Microsoftの視点:Windows 7のITプロ向け機能と開発体制」)