東京ガスが次世代のガスメーターの開発を進めている。ガス用の「スマートメーター」だ。無線通信機能を搭載することで、ガスの利用状況を把握したり、各種の警報装置などと連携し安全対策を強化したりする考えだ。社会全体の省エネ推進や安全対策の中核に据えようという構想が動き出している。

 スマートメーターとは、ネットワークに接続し、情報システムと連携可能な計測器のこと。米オバマ大統領のグリーンニューディール政策で浮上した、各種ライフラインの効率を高める「スマートグリッド」構想を実現するための主要要素の一つとして注目されている。社会に供給されるエネルギーと企業や一般個人が消費するエネルギーをより的確に把握することで、エネルギー資源の消費量削減を目指す。

 東京ガスが開発しているのは、ネットワーク経由でガスの使用量をリアルタイムに把握するほか、ガス漏れ検知器や火災報知器、防犯装置などと連携し、ガスの供給を遠隔停止したりを可能にするようなガスメーター。ガスの利用者に利用状況を伝え省エネを促し、社会全体のエネルギー利用効率を高めることや、ガス利用時の安全・安心の向上といった効果が期待できる。

写真1●東京ガスが開発を進めるガス用の「スマートメーター」と無線装置
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 その試作機は、一見しただけでは一般に使用されているガスメーターと大きくは変わらない(写真1)。

 しかし中身は違う。2種類の無線通信機能を使い分ける機能を搭載する。ガス会社はネットワーク経由でアクセスし、家庭や企業の屋内にあるメーターを管理できるようになる。

アナログ回線が使えない契約先が増加

 この新型ガスメーターを中核とした新しいガス供給インフラは、「ユビキタスメータリングシステム」と呼ばれる。東京ガスのほか、大阪ガスなどの主要ガス会社がNTTが共同で研究・開発している。

 ガス会社がユビキタスメータリングシステムに期待する背景には、ガスメーターの管理が難しくなっていることがある。これまでも東京ガスは、アナログ電話回線を使って管理センターにデータを送信できるガスメーターを、約60万件の契約先に設置している。ただし全契約数は約1000万件だから、ごく少数ではある。

 その通信機能付きガスメーターにしても、IP電話などの導入が進んできた最近は、アナログ電話回線を使用しない住居やビル設備が増加したことで、設置が難しくなっている。アナログ回線がなければ通信できないだけに、通信方式を抜本的に見直す必要が出てきた。