JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009の翌日,スタンフォード大学を訪ねた。シリコンバレーの中心,Palo Altoに位置し,Googleや,Yahooなどの有名企業が生まれる舞台となった大学である。

 前日のカンファレンスで渡米をしたいと強く思った学生の僕にとって,直近でシリコンバレーで暮らす手段は「大学への留学」である。渡米前は,有名企業が生まれた現場を見てみたいと思っていたが,すでに僕は変わっていた。自分がこの環境で学んでいけるか,あるいはここで過ごしたら楽しそうかという視点で,スタンフォード大学を見て回った。

すべてが広いキャンパス

 甲子園球場約830個ぶんとされる広大なキャンパスには,端にいる人が米粒に見えるくらい果てしない芝生,大学の敷地内とは思えない湖,アメリカの広く青い空にぴったりな低くて幅の広い建物などなどが広がっている。圧倒してくる景色に対して,ただの観光客でしかない僕は「絶対ここに来てやる」という気分を上昇させていた。

 とくに度肝を抜かれたのは,表のロータリーになっている大きな芝生だった。

Grassy carpet at Stanford

 しかしこのあと大学の地図を見たときに,このロータリーが大学の敷地全体に対してそれほど大きくないことを知って,もう一度驚いた。

同じ気持ちで

 スタンフォード大学では,現地の大学院生との交流会なども催されていた。僕らはそれに出席をせず,朝から夕方までずっと工学部はどこだ,コンピュータ・サイエンスの棟はどれだと歩き回った。まるでロールプレイング・ゲームで,大きなダンジョンを探検するかのようである。

 一緒に回ったのは4人。僕以外の3人も口に出すわけではないが,先に書いたような,自分がこの環境で学んでいけるか,あるいはここで過ごしたら楽しそうかという気持ちのようだった。大学の建造物を見て,学科の位置や入り口を予習する。まだ留学が決まったわけじゃないのに。

 さて,探検の目的は二つあった。一つはGoogleの初期サーバーの展示を見ること。「Gates Building(ゲイツ館)」と呼ばれる建物の中にあるらしい。その名の通り,ビル・ゲイツの寄付によって立てられたものだそうだ。もう一つはHoover Towerという塔に登ること。大学を一望できるらしい。

 ところが,どちらもダメだった。ゲイツ館は休館日で,Hoover Towerもお休みだった。写真の左がHoover Towerである。

Hoover Tower

 残念ではあったが,探検は止まらない。留学が決まった気分のまま,スタンフォード大学を歩く。

すっかり観光客に

 大学の中央部には,大きな書店があった。本だけでなくスタンフォードのグッズショップや,カフェが入っている。コンピュータの技術書や教科書のコーナーは,エンジニアとしても留学を考える人間としても,興奮する景色だった。うろうろしているうちに,スタンフォード大学の校章の入ったグッズを抱えてレジに並んでいた。いつのまにか観光客気分である。

 ブックストアのカフェとは別に,理髪店や食堂の入った棟も訪れて食事をとった。日本の大学でいう生協のような雰囲気である。

BLT

 写真は仲間が食べたBLT(ベーコンとレタス,トマトのサンドイッチ)。僕が食べたフレッシュ・ハンバーガーよりおいしそうだった。ぼくのフレッシュ・ハンバーガーも,ちょっと野菜が多めで,ヘルシーでおいしかった。アメリカに似合わず,ボリュームは日本のファーストフードと対して変わらない。

 ここを訪れている人のほとんどがノートPCを開いてくつろいでいた。アメリカの大学がすべてこうなのかはわからないが,コンピュータやインターネットが生活にしっかりと根付いている雰囲気が印象的で,うらやましく感じた。

 大学の中を歩き回っているうちに,夕方が来た。1日かけても,全部見て回るのはとうてい無理だったようである。迎えの車が来るころには,足の疲労が限界だった。最初に見たロータリーの芝生で,4人でぐったりしていた。

 芝生に身を預けながら,やっぱりここに留学したいと昨日から変わらずに感じている自分に気付いた。次にここを訪れるときは,留学か,起業か,シリコンバレーの一員でありたい……そう思いながら広い芝生の上で,迎えの車を待っていた。