NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は,次世代クラウド・コンピューティング基盤「Setten(セッテン)」の実証実験を2009年6月1日に開始した。流通大手など15社が実験に参加し,性能などを検証した後,年度内の商用化を目指すという。

 「あらゆるサービスをつなぐ“接点”にする」ことを目標に開発しているという同基盤は,「サービス創造グループ」への変貌を目指すNTTグループ全体にとっても,サービス連携の要となる可能性がある。だが,実証実験の実施環境を聞くと,現時点ではグループ連携の足並みは乱れている。

 Settenは,アクセス網を含むユーザーの利用環境や,企業が自社内に構築済みのシステムまで含めて連携する機能を持つ。例えば,NTTコムが開発した「多要素認証機能」や,企業システムと連携するための公開API(application programming interface)がそれだ。発表時には,「NTT東西のNGN(次世代ネットワーク)網が備える回線認証機能も利用でき,インターネット経由で利用するのに比べて安全性が高い」とアピールしていた。

 しかし実証実験では,NGN経由でSettenを利用する企業ユーザーはないという。実は,今のところNGN網の回線認証機能は,ひかり電話やフレッツVPNといったNTT東西のサービスでしか使えないのだ。

 実験ではBフレッツ回線を使い,多要素認証機能も,NTTコムが提供するICカードなどの代替手段で試すという。NTTコムは,「NTT東西は回線認証機能を外部からも使えるようにする予定で,いずれは連携が可能」とする。だが,実験開始に間に合うよう両社の調整ができなかった点に,グループ連携の前途多難さが透けて見える。