GoogleがついにデスクトップOS「Chrome OS」を発表した。だが実は,Googleの社内では既に“脱Windows”環境になっている。「デスクトップの半数以上はLinuxで,Windowsは8分の1程度,あとはMacintosh」とGoogle Open Source Programs ManagerのChris Divona氏は明かす。ワープロや表計算も当然ながら「Google Docsが標準で,Webブラウザがあればいい」(Divona氏)。

Googleの社内デスクトップ,半数は「Goobuntu」

 Googleが社内で使っているLinuxは「Goobuntu」と呼ばれている。「LinuxディストリビューションUbuntuに,Googleの社内用ネットワーク・ツールなどを付加したもの」(Divona氏)だという。Goobuntuは一般的なデスクトップ向けLinuxであり,独自開発のウインドウ・システムを搭載するChrome OSとは異なる。しかし,Windowsを使わなくとも仕事ができる,ということは,Google社内では当たり前のことだ。

 だが,威勢のいい話はここまで。“脱Windows”は,Googleがエンジニア文化の企業だから実現している面があることは否めない。Googleから一歩外に出ると,Linuxは依然として少数派なのだから。

ネットブック向けLinuxは既に存在するが,まだ少数派

 Chrome OSはネットブックからデスクトップPCまでをターゲットとしているが,Linuxを搭載したネットブックは既に発売されている。一時は「ネットブック=Linux」という状況もあったが,今は逆にWindowsに押されっぱなしだ。

 Windows IT Proによると,1年前はLinuxモデルの価格が安いことからWindowsのネットブック市場におけるシェアは10%を切っていた。残りの90%以上がLinuxを搭載したモデルだったのだ。Linux搭載モデルは,Windows搭載モデルより1万円程度安かった。低価格のネットブックでこの差は大きかったし,また最初にネットブックに飛びついた新しもの好きのユーザーにとってLinuxであることはそれほど問題にならなかった。

 しかし,この状況を重く見たMicrosoftがネットブック向けのライセンス価格を引き下げた。市場が拡大してネットブックを購入し始めた一般のユーザーは,新しもの好きのユーザーとは違って使い慣れたWindowsを望む。その結果,ネットブックの96%がWindowsを搭載するに至ったのである(関連記事:価格戦略でネットブック市場からLinuxを締め出したMicrosoft)。

 さらに日本では,ほとんどのメーカーがそもそもWindows版しか発売していない。上記の理由に加え,周辺機器が対応していないことや,メーカーにとってサポートが面倒なことが理由である。

米Good OSのブラウザ専用OS「Cloud」
米Good OSのブラウザ専用OS「Cloud」
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 一般的なLinuxだけでなく,ネットブックを対象にしたブラウザ専用OSも既に商品化されている。米Good OSのCloudである。LinuxをベースにブラウザとしてChromeを搭載しており,電源を入れてから数秒で起動しブラウザを利用できるのがウリだ(関連記事:Good OSがWebブラウザ専用OS「Cloud」,電源投入後数秒で起動 )。こちらも,台湾GIGABYTEから,Windows XPもあわせて搭載するプリインストール機が1モデル出ただけで,市場で成功しているとは言い難い。

 “非Windows”OSは,技術者向けなど絞り込んだ用途では既に十分実用可能なレベルに達している。しかし,一般ユーザー向けのOSとしては,多くのトライアルがなされてきたもののまだ成功していない。OSが無償でも,Microsoftが本気で価格戦略を仕掛けてきている今,わずかな価格差だけでは勝負できない。周辺機器への対応,ユーザー・サポートの問題は依然として残っている。

 Chrome OSは,Windowsにシェアをひっくり返された既存のLinuxとどう異なるのか。これまでのLinuxが越えられなかったカベをどう乗り越えるのか。常識を覆すサービスやプラットフォームをいくつも打ち出してきたGoogleが提供元であるだけに,寄せられる期待は大きい。Chrome OSの詳細はこれから明らかになる。