2008年4月、デジタルサイネージ事業を手がけるストリートメディアを大森洋三氏が立ち上げた。同氏はこれまで、ウェザーニューズ、サイバード、インデックスと、携帯電話向けメディア関連企業において経営の中枢を担ってきた。「命をかけるだけの価値がある」というデジタルサイネージ事業への思いを大森氏に聞いた。(聞き手は島田昇=日経コンピュータ)

ストリートメディアのデジタルサイネージの仕組み
図1●ストリートメディアのデジタルサイネージの仕組み

ストリートメディアは、どんなデジタルサイネージを手がけるのか。

 当社のデジタルサイネージ事業は、地上デジタル放送を活用したサービスであることが最大の特徴だ。当社の立ち位置は、デジタルサイネージを対象にしたコンテンツ配信サービス提供者ではあるが、コンテンツ配信そのものではなく、デジタルサイネージと携帯電話などを連携させるサービス部分を軸に、事業モデルを展開する。

 具体的には、デジタルサイネージに表示されている映像に対し、消費者が非接触型ICカードを搭載する携帯電話をかざすと、その映像の関連情報やクーポンを取得できるという仕組みだ(図1)。デジタルサイネージ向けコンテンツの配信自体は、当社が放送局に依頼し、電波経由で送られる。現在、東京・神田の街中に40~60台のディスプレイを設置し、展開している。飲食店が集客に活用するなど好評だ。

40の独自特許で放送局を巻き込む

なぜ、放送局が立ち上げ間もないベンチャー企業の放送依頼に応じるのか。

 技術的な強みがあるためだ。当社は地上デジタル放送を活用したデジタルサイネージ向けコンテンツ配信技術で、約40の特許を申請している。

 その一つが、デジタルサイネージ向け番組を10秒などの小さな単位で制御する技術だ。地上デジタル放送で送った番組制御プログラムを、当社が開発した「Echo(エコー)ブラウザ」が変換することで、デジタルサイネージに流れる情報をコントロールする。具体的には、一番組を何秒にするか、そのファイルをいつ流すのか、FeliCaとの連携、といった三つの情報を放送言語(BML)に乗せて送り、これらをEchoブラウザがHTMLに変換する。

 この技術を用いなければ、番組の最小単位は5分になる。だが、これは屋外でデジタルサイネージを見る利用者には長すぎる。また、利用者は携帯電話に特別なアプリケーションをインストールしなくても、携帯電話をデジタルサイネージにかざすだけで、映像にまつわる情報を簡単に取り込めるようになる。

 日本でも、デジタルサイネージと呼べる商品映像を流すディスプレイが、大手流通の店舗などで見かけることが多くなってきた。しかし、それらのほとんどがネットワーク化されていない。ネットワーク化されれば、複数のディスプレイに同じ映像を流せ、波及力が高いメディアになり得る。複数のディスプレイに流す映像の内容や放映時間もコントロールできるようになる。単なる告知手段を超えた展開が可能になるわけだ。