既存の顧客が運用管理業務の改善活動に取り組むことが分かった。関係強化の一環で、改善活動への参加を志願。これが商談につながり、ITベンダー4社との勝負になった。

 「ワーキンググループに参加させてもらえませんか」。運用管理ソフト「A-AUTO」の開発・販売を手掛けるビーエスピー(BSP)で第一営業部課長を務める清水義仁はこう依頼した。

 相手は、食品卸大手の国分でシステム企画・運用チームのリーダーを務める久保隆行である。「参加するだけなら問題はありませんよ」。久保は承諾した。2007年2月のことだ()。BSPは以前から、A-AUTOの導入を支援するなど国分と付き合いがあった。

表●国分がBSPに発注するまでの経過
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表●国分がBSPに発注するまでの経過

 このワーキンググループは、国分のシステム部門がシステム運用管理業務のフローやルールを見直すというもの。システム運用のベストプラクティスである「ITIL」に基づいて、運用や保守といった業務を改善しようとしていた。

 清水がワーキンググループへの参加を志願したのは、既存の顧客との関係をより強固にすることと、ITILを導入するユーザー企業の実態を把握したかったからだ。「国分だけでなく、他のユーザー企業への営業活動に役に立つ情報を必ずや収集できる」。こう清水は考えた。

開発中の新製品に要求を盛り込む

 ワーキンググループは、「問題管理」「変更管理」「構成管理」といったテーマごとに開かれた。清水はこれら三つの分科会のすべてに参加。2007年2月から12月まで1年近く、少なくとも週に1回は国分に通い、議論に加わった。

 ワーキンググループに参加し始めたのとほぼ同時期、清水は社内で新製品の開発計画があるとの情報を得た。製品名は「LMIS」。ITILに基づく運用業務を実現するためのソフトである。

 「ITILの導入を検討しているユーザー企業が何を求めているかを理解できれば、競争力の高い製品に仕上げられる」。開発が本格化し始めた夏以降、清水は、自社の製品開発担当者を国分のワーキンググループに出席させることを思いついた。

 「うまくいけば国分をLMISのファーストユーザーにできるかもしれない」。清水はこうも考えていた。

 清水は2007年11月、自社の開発部長を説得。「顧客の生の声を製品の機能に反映できる良い機会です」。開発部長は了承した。

 当然、国分の承認を得なければならない。「ITIL対応の運用業務支援ソフトを開発中です。ユーザー企業のニーズを知りたいので、当社の開発担当者をワーキンググループに参加させていただけませんか」。

 国分の久保は「連れてくるのは構いませんが、新製品を導入するわけではありません」と告げた。こうしてワーキンググループにBSPの開発担当者も参加する。