第68回 アウトソーシングという空に現れた雲
Forrester Research, Inc. クラウドコンピューティングがITサービス業界を一変させるのは確実だ。クラウドの「第一波」は、ITインフラ事業者の利益率を下げ、システムを自前で運用していた企業に利益をもたらし始めている。クラウドの「第二波」によって、アウトソーシングビジネスが激変する。アウトソーシング事業者は現在、クラウドをビジネス上の脅威と見なしている。しかし、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業者と連携して、自らがクラウドベースのサービスを始める時期に来ている。 エンタープライズ市場には現在、三つのクラウドサービスが存在する。(1)WebメールやCRM(顧客関係管理)といった、SaaS形式で利用できるビジネスアプリケーション、(2)アマゾン・ウェブ・サービシズに代表される、基本的なITインフラを提供する「スケールアウトクラウド」、(3)SAP NetWeaver ERPのような従来型ビジネスアプリケーションをホストできる「サーバークラウド」---である(スケールアウト/サーバークラウドの詳細は『第56回 サーバークラウドとスケールアウトクラウドは別物』を参照)。 クラウドは、複数の企業で資源を共有し、どこからでも利用できる「パブリッククラウド」としてまず始まった。クラウドのコンセプトが企業内データセンターにも適用できることがわかり、単一の企業が利用する「プライベートクラウド」という概念が生まれた。 例外もあるが、現状のパブリッククラウドは、規模の経済を追求できるスケールアウトクラウドやSaaSがほとんどである。一方のプライベートクラウドは、既存の仮想化技術の延長線上にあるサーバークラウドであることが多い。 クラウドの「第一波」は、ITインフラビジネスに「ハイボリューム(大容量)・ローマージン(低利益率)」という構図をもたらしつつある。パブリッククラウドの領域では、SaaS事業者がマルチテナントによる規模の経済効果を背景に、サービス料金を下げ続けている。またプライベートクラウドは、大企業が社内で規模の経済を追求するために導入を進めている。ITインフラ事業者の利益率は下がる一方だ。 アウトソーシング事業者は、これから到来するクラウドの「第二波」に備えるべきだ。パブリッククラウドから提供されるSaaSが、アウトソーシングを置き換えつつあるからだ。 アウトソーシング事業者が採るべき対策は見えている。顧客基盤を守るために、SaaSのようなサブスクリプション(購読)型のサービスを提供開始すべきだ。これによってカスタム開発や保守といった既存ビジネスの収入は減少するが、自社の売上高がゼロになることはない。 アウトソーシング事業者は、自ら巨大なプライベートクラウドを構築すべきだ。そしてそこにPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)基盤を設け、SaaS事業者や独立系ソフトウエア事業者(ISV)がそのPaaSを利用して、顧客に使いやすいサービスを提供できるようにするのだ。 SaaS事業者は、アウトソーシング事業者の顧客にサービスを提供したいと考えている。コストに敏感なアウトソーシング顧客もSaaSに興味を持っている。しかしパブリッククラウドに不安を抱く顧客も多い。アウトソーシング事業者のプライベートクラウドを利用する「プライベートSaaS」であれば、パブリッククラウドのSaaSよりも信頼性を高められるし、よりきめ細かいSLA(サービス・レベル・アグリーメント)も設定可能である。 これまでも多くのアウトソーシング事業者は、数多くのパッケージソフトウエア事業者と提携して顧客にサービスを提供してきた。同様に今後は、SaaS事業者とも連携を密にして新しいITシステムを作るべきだ。 ◆本記事は,“Clouds Appearing in The Sky of Outsourcing”を日経コンピュータ編集部で翻訳・構成したものです。
出典:
137ページより
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