企業におけるPCを購入サイクルは3~5年。その後は廃棄されるのが一般的だ。そんな“現役を終えた”PCを譲り受け、社会問題の解決に役立つように再生する活動がある。その一つが、特定非営利活動法人(NPO法人)のイーパーツが2001年に始めたPCの再生・寄贈事業だ。イーパーツはこれまでに、約3200台のPCを再生。2008年度だけで1000台超のPCを再生したという。

写真1●企業が使い終えたPCを再生する1
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写真2●イーパーツがPCを再生している様子
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 再生PCの“素”となるのは、企業が入れ替えなどで使わなくなったPCである。イーパーツが企業に依頼し、使用済みPCを譲り受ける。そのPCを、関東近郊にあるイーパーツの作業工場内で再生する(写真1写真2)。

 具体的には、ハードウエアをチェックし、データを消去してから、Windowsやドライバ、Officeソフトを再インストールする。マイクロソフトが再生PC向けに正規ライセンスを提供する「MAR(Microsoft Authorized Refurbisher)プログラム」を利用している。

 またウイルス対策として、「ウイルスバスター」を組み込んでいる。同ソフトは、トレンドマイクロが社会貢献活動などを対象に、無償でライセンスを提供しているものである。

再生PCへの応募件数は年400件超

 イーパーツは再生したPCを、社会貢献活動に取り組むNPO法人や団体に寄贈する。寄贈を望むNPO法人の中から、活動内容や実績、必要性などを点数化して、対象を絞っている。寄贈後は利用報告書を2回提出することを求めている。基本的に無償だが、送料やマイクロソフト製品のライセンス費用などの実費を1台当たり3500~4000円程度を手数料として受け取っている。

 イーパーツの寄贈プログラムへの応募数や、寄贈するPCの数は増加傾向にある(図1)。NPO法人や団体からの応募件数は年間400件を超え、応募台数の合計は1500台以上になる。

図1●再生PCの寄贈プログラムへの応募数の推移
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 寄贈先を社会貢献活動に取り組む団体に限定している理由について、イーパーツの会田和弘常務理事は、「NPO法人は事務局員が数人など小規模な組織が少なくない。IT活用の面でも遅れており、業務効率化が進んでいないところも多いため」と話す。支援者の情報管理や財務会計処理といった事務作業に時間を取られると、その団体が本来取り組むべき、障害者の支援や地域の活性化、児童就労問題、子育て支援といった活動に十分なリソースを割けなくなる。

 もちろん、PCさえあれば業務効率が高まるわけではない。それでも、「まずはPCを確保できなければ、先には進めない」(会田常務理事)。非営利団体は一般に資金面でも潤沢とはいえないため、最新の高価なPCにはそうそう手が出ない。そこに、イーパーツが用意するような再生PCのニーズがある。