端末高機能化の流れに変化,安価な“SNS専用携帯”が登場異例のGSMAアワード受賞,携帯電話機開発の新たな方向性を示す高機能化の一途をたどった携帯電話機開発の方向性に変化の兆しが見える。本年のGSMAアワードを受賞した端末「INQ1」は,その状況を如実に表している。この端末は,英国の携帯電話事業者,3(スリー)が2008年末に発表した製品で、低価格ながらソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の利用に特化しており,そのコストパフォーマンスの高さや他の機能を大幅に削った斬新さが高く評価された。“SNS専用携帯”という新たなジャンルの端末が登場してきた背景や,今後の市場への影響について解説する。 (日経コミュニケーション編集部)
宮下洋子/情報通信総合研究所 研究員
英国の携帯電話事業者,3(スリー)UKは2008年11月,ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の利用に特化した安価な携帯端末「INQ1」を発表した(写真1)。この端末の最大の特徴は,低価格ながらインターネット関連のアプリケーションを利用しやすいように工夫されている点である(表1)。FacebookやSkype,Windows Messengerといったネットのアプリケーションにワンクリックでアクセスできるほか,INQ1が搭載する「Living Addess Book」という電話帳では,利用者の友人が新しい写真をFacebookに掲載すると電話帳に自動反映する機能を持つ。SNSの機能をシームレスに端末に取り込んでいるのが特徴だ。 表1●INQ1の主なスペック
インターネット接続機能を重視したハイエンド向け端末と比べ,端末の価格はエントリー価格帯まで抑えている。契約型の場合,15ポンドから用意されており,プリペイドの場合は10ポンドの通話分数付きで88.29ポンド(1万2400円,1ポンド140円で計算)である。 あえて低パフォーマンス・プロセッサを採用しコストを抑えるコストを抑えるためINQ1では,必要以上の機能や処理能力を搭載しない戦略を徹底している。例えばOSは,多くのスマートフォンが採用するシンビアンなどの汎用OSではなく,米クアルコムの「BREW」を活用した独自OSを使っている。プロセッサは,通常のスマートフォンが採用するARM11ではなく,よりパフォーマンスが低いARM9である。その結果,プロセッサのコストを半減し,同時にバッテリーの長寿命化も実現している。 INQ1は,3 UKの親会社である英ハチソン・ワンポアが設立した携帯電話メーカーINQが開発。中国の機器メーカー,アモイ(夏新)が製造した。英ビジネスウィーク誌によるとINQのミーハンCEOは「それほど優れているわけではない携帯端末に大金を払うことにうんざりしている」と不満を語り,可能な限り価格を抑えネットを簡単に利用できる端末を自社で開発する計画を語っている。 INQ1は2009年2月,GSMアソシエーション(GSM)が毎年表彰する「Global Mobile Awards」において,端末部門の大賞を受賞した。審査員は表彰に際し,「ソーシャル・ネットワーキングのハブとして,低価格ながら付加価値の高いサービスを提供している点が優れている」とINQ1を評価している。Global Mobile Awardsはこれまで大手の携帯電話メーカーが受賞するケースがほとんどだったことを考えると,今回のINQ1の受賞は異例と言える(表2)。 表2●歴代のGSMAアワードの受賞端末
3 UKは,自らSkypeを端末に搭載して提供するなど,ネットの活用に積極的な例外的なキャリアである。データ通信サービスの拡充により新規顧客の開拓やデータARPUの向上を狙い,ドミナントなキャリアが敬遠する分野へ積極的に進出する強気な姿勢を見せている。 |