今回は,誰もが簡単にできる,新入社員や後輩,部下のやる気を高めるテクニックを紹介しましょう。

 読者の中には,この春に新卒の新入社員が入社してきた,という人も多いでしょう。新入社員を育成するための重要なポイントは2つあります。

 一つは計画的なOJT(On the Job Training)の実施です。行き当たりばったりでは,人を育成することはできません。新入社員の配属が決まったら受け入れ先である皆さんで計画を立てる必要があります。まず,OJT期間を通してどのような人材になってほしいのかを明確にし,必要なスキルや考え方,知識を段階的に身につけられるように,指導する内容,時期を決めます。配属後に最も困ることとして,新入社員からよく挙がるのが,「何をすればよいか分からない」。こう思われないためにも,きちんと計画を立てる必要があります。

 2つ目は,本人のやる気を高めることです。いくら用意周到に準備してOJTを進めても,本人のやる気がなければ先輩である皆さんの努力は空回りし,無駄に終わってしまいます。「やる気は本人の問題」と切り捨てるのではなく,新入社員が仕事の楽しさを知り,自らの成長を実感できるように動機付けていくのも,OJTを進めるうえでは,とても大切なことです。若い世代にとって転職はそれほど珍しいことではありません。会社の将来の貴重な戦力になる新入社員が,やる気をなくして配属してすぐに転職・・・では悲しいですね。

 本人のやる気を高めることが重要なのは,新入社員の育成だけではなく,後輩や部下の育成でも同様です。先輩や上司が,いくら部下や後輩の育成に力を入れても,本人にやる気がなければ効果は出ません。ひいては,チームとしての生産性も上がりません。これは,言うまでもないことですよね。

存在や行動,変化など気づいたことを言葉にする

 では,どうすれば,本人のやる気を高められるでしょうか。新入社員や後輩,部下のやる気を高めるためのキーワードは,「承認」です。英語では「acknowledgement」と言います。

 そもそも私達は「他者から認めてもらいたい」という欲求があります。他者から承認されることで,自分が認められている,気づいていてもらえている,という気持ちになり,その結果,やる気が高まるのです。さらに,相手との信頼関係の構築にもつながります。

 具体的には,

相手の存在や行動,変化など気づいたことを認め,言葉にして伝えます。

 あなたが会社に新しく購入したスーツを着て行ったときに,周囲から「あれ,今日は見たことのないスーツだね」と言われたら,嬉しい気持ちになりませんか?これも承認のメッセージの一つです。

 何かの成果がなければ「褒める」ことはできませんが,「承認」のメッセージは,いつでも皆さんが気付いた時点で,相手に贈ることができます。新入社員や後輩,部下が必死に作業したにもかかわらず結果として上手く行かなかった場合を考えてみましょう。この場合,結果が出ていないので成果について褒めることはできません。しかし,その過程の取り組み姿勢や態度などについて,「今回の作業,すごく一所懸命に取り組んでいたよね」と「承認」することはできます。

 私達はついつい,相手の成果や結果についてのみ,フィードバックしてしまいがちです。しかし,例えば新入社員の場合,そう簡単に結果が伴わないので,評価したり褒めてあげたりすることは難しいでしょう。するとフィードバックも少なくなってしまいます。

 そうではなく,新入社員や後輩,部下と接していて気づいたこと,感じたことを,そのまま言葉にして伝えましょう。日常会話の中の些細なひと言で,相手のやる気は刺激できるのです。

 感じたこと,気づいたことがあっても,心の中で思うだけで口に出さないことがほとんどかもしれません。照れくさく感じて,「わざわざ言わなくても」と考えるかもしれません。でも,せっかく感じたこと,気が付いたことがあるのなら,それを言葉にして伝えていくことが大切です。