米Mozillaは2009年6月30日(米国時間),最新版Webブラウザ「Firefox 3.5」をリリースした(関連記事:Firefox3.5正式リリース,「Firefox 3.5の灯」も公開)。このFirefox 3.5では新機能の追加,パフォーマンスの改善,最新Web標準への対応,カスタマイズ機能の改良を実施している。Firefox 3.5のダウンロード数はリリース直後から急増し,公開後24時間のダウンロード数は110万回を超えた。

 MozillaのCEOであるJohn Lilly氏は「Firefox 3.5は最も革新的な各種Web技術を組み合わせており,最高の完成度を持つ強力かつ近代的なWebブラウザとなった。今日のWebは実に様々な用途で使われており,Webブラウザにとって素晴らしい時代である」と述べた。

プライベート・ブラウジングやJavaScript実行速度の向上を実現

 Mozillaは当初,この最新版をマイナー・アップデート用の「Firefox 3.1」としてリリースする計画だった。だが,方針を変更してバージョンをメジャー・アップデート用のFirefox 3.5にした(関連記事:Mozilla,次期「Firefox」のバージョン番号を「3.1」から「3.5」に変更)。Firefox 3.5は,IE 8の「InPrivate Browsing」と同様の閲覧履歴を削除できる新機能「Private Browsing Mode」を搭載したほか,新たなWeb標準のHTML 5などに対応している(関連記事:Firefox 3.1 Beta 2公開,履歴を残さないブラウジング・モードなど追加)。

 Mozillaによると,Firefox 3.5はJavaScriptの処理能力が大幅に向上した効果で「複雑なWebサイトの処理速度が『Firefox 3.0』の2倍,『Firefox 2.0』の10倍になった」という。米Googleや米AppleといったほかのWebブラウザ・ベンダーもこのところ同様のパフォーマンス向上を主張し,いずれも自社製Webブラウザに搭載した新型JavaScriptエンジンも宣伝した。Mozillaは自分たちのJavaScriptエンジンを「TraceMonkey」と呼んでいる(関連記事:Firefox 3.1に搭載予定のJavaScriptエンジン「TraceMonkey」,数倍~数十倍の高速化)。

 ライバルに目を向けると,Appleが2週間前に話題を投じたばかりだ。6月8日にリリースした最新版Webブラウザ「Safari 4」のダウンロード数が,3日間で1100万件になったと発表したのだ(関連記事:「Safari 4」のダウンロード数が3日間で1100万件突破,過半数がWindows版)。ただしAppleは,これらダウンロードの大半が同社のソフトウエア・アップデート・ユーティリティによる強制的なアップデートで行われた,という情報を公表しなかった。

 一方MozillaはAppleの発表から1日後の6月11日,極めてマイナーなアップデートとしてセキュリティ・アップデート版「Firefox 3.0.11」を公開し,Safari 4のダウンロード数を客観的な視点で評価できるようにしてくれた。Firefox 3.0.11のダウンロード数は,たった24時間で1億5000万件を超えたのだ(関連記事:Mozilla,最新版「Firefox 3.0.11」で重要度「最高」の修正4件)。この事実から,Firefoxは人気があり,Safariはそうでないことが分かる。

市場シェアでIEを上回る地域も

 Firefoxは,世界Webブラウザ市場で米Microsoftの「Internet Explorer(IE)」に続く位置を獲得済みだ。このFirefoxの人気は,当然地域によって異なる。米国においては,Firefoxの使用シェアは約20%で,IEは73%もある。一方,Firefoxが支配的な市場も存在する。Firefoxの市場シェアは欧州では相当に高く,フィンランドやポーランド,スロベニアといった国々だとIEを上回り,50%近くを占めている。オーストラリアとニュージーランドでの市場シェアはいずれも30%以上だ。

 Mozillaは,WebサイトでFirefox 3.5の詳細情報を公開し,無料ダウンロード提供している。