当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第1回第5回では、グローバリゼーションに不可欠な「心・技・体」について説明してきました。第6回では、喫緊の課題である「経費の節減、固定費の見直し」に対する対処法として、IT部門の“見える化”指標を紹介しました。今回は、その指標をどのような方法で作成していくかについて、ステップを追って紹介します。

 みなさん、こんにちは。第6回では、「経費の節減、固定費の見直し」について、固定費の変動化が筆者のクライアント企業の中でも最大かつ重要な課題・関心事であると話しました。そして、IT部門のコスト構造を改善するには、「一過性のコスト削減」と「恒常的コスト削減」という二つの戦略を同時遂行しなければならないと指摘しました。みなさんも実感されていると思うのですが、プロジェクトの凍結といった「一過性のコスト削減策」においては、すでに手が尽きた感があるのではないでしょうか?

 一方、もう一つの戦略である「恒常的なコスト削減」は、中・長期的な方策ではありますが、「発注先ベンダーの業務内容の平準化」や「IT部門内の外注スタッフの属人化の排除」「オフショア/ニアショアを含めた、ベンダー運用モデルの見直し」などと平行して整備すれば、大きな効果が期待できるはずです。

ITILアプローチも、まずは棚卸しから

 そのためには、「サービスベンダーと目標を共有するための可視化ツール」が必要だと話しました。IT部門の品質を保ったままで、生産性を改善し、サービス当たりの単価・コストを下げていくには、この可視化ツールが不可欠です。そして、その一例として、可視化指標を紹介したのです。

 では実際に、どのような方法で指標を作成していけばよいのでしょうか?

 IT部門の取り組みの一つに、自らを「サービス提供部門」に位置づけ、顧客の視点から提供サービスを検討していく、ITIL(ITインフラストラクチャライブラリ)アプローチなどがあります。第1回第5回で述べた、「グローバリゼーションの心・技・体」でいえば、「体=プロセス」に当たる部分を見直そうという動きです。

 ITILアプローチは、ITILフレームワークに則り、IT部門内のプロセスを平準化し、IT部門が業務として遂行するプロセス、つまりシステム(インフラ、アプリケーション、データレイヤーなど)の構築に関する変更・構成・リリース管理などを定義し、平準化していく手法です。このアプローチを採る前には、「現在提供しているサービスの定義(アウトプットの定義)」が肝要です。

 プロセス分析の方法の“初めの第一歩”が、INとOUTの定義だということは、だれもが知っているはずです。ところが、ITILフレームワークを導入したIT部門であっても、サービスカタログのような体系だった方策で、「提供サービスの定義」を作成されているところは、ほとんどないに等しいのが現実です。INとOUTの明確な定義なしに、プロセスを変えることのリスクは、全員が共有しているはずにもかかわらず、現実にはそうなっていないのです。

 では、「社内顧客の視点に立ったサービスカタログ」とは何でしょうか?

 通常IT部門は、社内顧客に対し、サービスベンダーと協業しながら「何らかのサービス」を提供しています。このとき、どんなサービスを提供しているのかが定義できていますか?あるいは、提供サービスとサービスラインアップが社内の顧客に「見える」形で、具現化されているでしょうか?これらを実行したものが、サービスカタログです。