リコーは足かけ3 年を費やして、リコーグループの国内系ネットワークを全面的に再構築した。増え続けるデータ通信需要に対応すべく、グループ内に複数あったネットワークを一本化、さらに拠点統合などによりネットワーク環境をスリム化した。その結果、年間10億円規模のコスト削減を実現し、一方でネットワークの総容量は計画立案当初の約2.4倍にまで増やすことに成功した。コスト効果と性能向上を両立させたネットワーク再構築が高く評価され、特別賞に輝いた。

 ネットワークコストの削減を狙って、ネットワークを再構築したリコー。リコーグループとしては第4世代(G4)に当たる新ネットワークは、実際に大幅なコスト削減という効果をもたらした。

 「2005年時点に2008年度末のネットワーク費用を予想したところ、2005年比で約1.3倍に膨れ上がることがわかった。それが新ネットワークの完成で、2008年度末の費用を2005年度比で約75%にまで圧縮できた」(リコーIT/S本部 IT/S技術センター ネットワークグループの安部佐和子リーダー)と言うのだ。

 それでは、どのように新しいネットワークを作り上げていったのだろうか。計画段階で、ネットワーク更新には大きく三つのテーマが掲げられた(図1)。

図1●リコーがネットワーク再構築時に取り組んだ「三つの課題」
図1●リコーがネットワーク再構築時に取り組んだ「三つの課題」
[画像のクリックで拡大表示]

性能を向上させ、一方でコストは下げたい

 まずコストの削減。リコーグループが進めていた業務改善では、Webアプリ型のERPやCRMシステムなどが多く使われるようになり、必然的にネットワークコストが増えるようになっていた。通信コストのビット単価は急速に下がっていたが、それを上回るデータ通信需要が総コストを引き上げていた。

 コストと表裏一体の課題として、データ通信需要に見合うネットワーク高速化が2番目のテーマとなった。コストを下げつつ、全体のネットワーク容量を増やしたい。新ネットワークには、相反する条件が要求された。

 さらに3番目のテーマとして可用性を高めることが掲げられた。旧ネットワークでは、例えば東京・品川の拠点が広域災害の被害を受けると、全国のリコーテクノシステムズの拠点でサービス技術情報システムが使えなくなるといった弱点があった。

 今回のネットワーク再構築では、コスト削減と高速化、可用性の確保の三つのテーマをクリアするために、従来のネットワーク構成を抜本的に見直すことにした。

 それまでのリコーグループのネットワークは、大きく四つの独立したネットワークの組み合わせになっていた(図2)。それぞれの異なる要求に伴い、ネットワークの構成が異なり、さらに運営も別々の会社に任せていた。

図2●新旧ネットワークの構成と、再構築により得られた効果
図2●新旧ネットワークの構成と、再構築により得られた効果
[画像のクリックで拡大表示]

 新ネットワークでは、ネットワークをグループ全体で一本化し、さらに運営会社もグループ内のリコーテクノシステムズ1社にまとめることにした。

 実は、販売会社とリコーテクノシステムズの拠点が同じ建物に入っていることは少なくない。しかしこれまでは、それぞれのネットワークが別ものだったために、異なる回線を引き込まざるを得なかった。ネットワークを一本化することで、こうした相乗りの拠点では引き込む回線を1本に集約できる。ネットワークから見た「拠点」の数を減らし、コスト削減につなげようというわけだ。

 一方でアクセス回線は広帯域化を進めた。拠点ごとに10M、100M、1Gビット/秒の回線を使い分け、必要な帯域を確保できるような設計を進めた。

 従来のネットワークで外部の複数の会社に別々に支払っていた運営費用は、運営会社をリコーテクノシステムズに一本化することで整理できる。重複した支払いを省いてコストを削減するとともに、グループ外へ流出するキャッシュを減らす効果も狙った。