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IT Japan Award 2009

日経コンピュータ

独自の手法で10倍速開発 7割主義で変化対応力を高める

良品計画

2009/07/17
目次 康男=日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 特別編集版 IT Japan Award 2009  pp.64-69
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 良品計画は独自の開発手法を採用することで、システム開発の短期化とコスト削減を図った。2006年12月に再構築したMD(マーチャンダイジング)システムを皮切りに、08年12月までに約130のアプリケーションを社内で開発。一方で、IT 投資の売上高比率は04年の1.8%から0.9%に半減させた。「7割主義」と「スピード対応」を方針に掲げ、利用部門の要望に最速1日、遅くとも1〜2週間で対応する。開発手法の独創性と、経営に資するシステム部門の姿が評価された。

 「無印良品」ブランドの小売店を展開する良品計画は、1週間に1本という猛スピードで新しいアプリケーションを開発したり、機能を強化したりしている。「思い立ったら即実行。合格最低ラインの7割主義で素早くシステムを開発し、検証と改善を繰り返す」。IT戦略を統括する小森孝取締役 情報システム担当部長兼流通推進担当管掌は強調する。

 同社は独自の開発方法論を採用することで、システム部門の開発・保守対応力を劇的に高めた。2006年12月に再構築したMD(マーチャンダイジング)システムを皮切りに、08年12月までに1週間に1本のペースで約130本のアプリケーションを開発した。それまでは1〜2カ月で1本がやっとだった。実に従来の5 〜10倍速でアプリケーションを開発できるようにしたことになる。

 さらにシステムの内製化を推進することで、2004年度は20億円(売上高比率1.8%)だったシステム投資額を、08年度には12億円(売上高比率0.9%)にまで下げた。

7割主義で利用部門の要望に即応

 良品計画ではシステム開発のために仕様書を作ったりしない。システム部員が作成したサンプル画面を見ながら、利用部門とシステム部門が“ワイガヤ”と意見を出し合い、まずは70点レベルの形に仕上げる。そして現場でシステムを実際に使いながら、機能を見直したり追加したりする。

 70点に仕上げるまでのスピードは速い。利用部門から相談を受けた直後にアプリケーションを開発し始め、翌日に稼働させることも珍しくない。実際、2008年1月に自動発注システムを全店に展開した際、発注ミスを店長や商品担当者が発見できるようにするためのアプリケーションを一晩で作った。

 素早くシステムを開発したり変更できるため、利用部門のシステム部門に対する信頼は厚い。「時間をかけて最初から完成度を高めるよりも、7割主義でシステムの企画・開発を繰り返すほうが、変化の速い今の時代に合っている」(小森取締役)。

 こうした取り組みができるようになった理由は三つある(図1)。(1)システムの内製化を推進したこと、(2)独自の開発手法を採用したこと、(3)データ活用の基盤となるMD(マーチャンダイジング)システムを整備したこと、である。

図1●良品計画のシステム開発・保守体制
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スクリプト言語でシステム開発

 良品計画ではシステムの分野によって、開発・保守を外部委託するか内製するか分けている。会計や販売管理、物流管理といった専門性が高く機能要件が変化しない分野の実行系システムは、外部のITベンダーに委託する。逆に生産・販売計画やマーケティングといった俊敏性が求められ機能要件の変化が激しい情報系システムは内製する(図2)。

図2●良品計画のシステム開発方針
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 2006年末まではすべてのシステム開発・保守を外部のITベンダーに委託していた。しかし、「とにかく時間がかかった。仕様を固めるだけで最低1カ月はかかる。そうこうしているうちに利用部門がシステムに求める要望は変わるため、せっかく開発しても活用されなかった」と、山崎裕詞 情報システム担当システム企画課長は振り返る。

 しかし、当時はプログラミングなどシステム開発経験がないシステム部員ばかり。そう簡単にシステムを内製化できない。そこで目を付けたのが、アプリケーションサーバーやデータベース管理ソフトを使わず、しかも簡単なプログラミングでアプリケーションを開発する手法だ(図3)。

図3●良品計画のシステム構築手法
スクリプト言語の「Bash」を使ってビジネスロジックを自社で記述する。データベース部分も含めパッケージソフトは使っていない
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 データを検索したり業務に合わせてデータを加工するビジネスロジックや、データ処理の一貫性を保ったりデータを二重化するデータ管理ロジックは、すべて「Bash」と呼ぶスクリプト言語で記述する。しかもデータベース管理ソフトを使わず、データはすべてテキストファイルで管理する。「ミドルウエアのオーバーヘッドがない分、処理も速い。ごく普通のパソコンで動作させても、25万件の商品データなら2秒程度で全件検索できる」と山崎課長は胸を張る。

 Bashは通常、UNIXやLinuxを操作するために利用する。ファイル内のテキストデータの更新や、テキスト内の数値計算に使うのが一般的で、企業の中核を担うシステム開発に利用する例はほとんどない。これに対し小森取締役は、「昔のメインフレームでは、テキストファイルを読み書きするコマンドをプログラミングしてシステムを開発していた。実現方法は違うにせよ、良品計画のシステム開発方法の考え方は同じ。ミドルウエアのパッケージソフトを使わなくても、システムは作れる」と意に介さない。

 「どの項目をどう計算し、どのような順番で表示するかを指定するだけ。素人でも2週間程度訓練すれば、簡単なアプリケーションを作れる」と、山崎課長はBashを使うメリットを強調する。「在庫情報の照会といったちょっとしたアプリケーションであれば、30〜50行程度スクリプトを書くだけ。データベースの論理設計も不要で、テキストファイルにデータを記録すれば済む。短時間でシステムを開発できるため、とにかく作っては捨てて、作っては捨ててを繰り返せる」(同)。

>> あらゆるデータをMDシステムに集約
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