前回は,「プロジェクト・リスク・マネジメント」知識エリアに含まれる,計画プロセス群のプロセス(図1)について解説しました。今回は,計画プロセス群の残りのプロセスをすべて解説しましょう。

図1●PMBOKで定義された44個のプロセス
[画像のクリックで拡大表示]

■人的資源計画プロセス

 「人的資源計画」プロセスは,「プロジェクト人的資源マネジメント」知識エリアに含まれるプロセスです。「人的資源計画」プロセスの主要なアウトプットは,

責任分担マトリクス(RAM,Responsibility Asssignment Matrix)
組織図

などです。

 責任分担マトリクスとは,「アクティビティ定義」プロセス(第5回参照)で抽出したアクティビティごとに各担当者の役割分担を定義した表形式の文書です(図2)。

図2●責任分担マトリクスの例
図2●責任分担マトリクスの例
[画像のクリックで拡大表示]

 WBSで作業を漏れなく洗い出して,WBSの最小単位であるワークパッケージをさらにアクティビティ・レベルにまで分解し(ここまでは第5回で説明しました),それぞれのアクティビティに担当者の役割をきちんと定義することは,非常に重要です。最初から役割を認識していれば,仕事にも前向きに取り組めますが,付け焼刃で仕事をアサインされると「これも俺の仕事?」という気持ちになって納得感が得られないからです。

 組織図は,プロジェクトの報告経路や指揮命令系統し示した図です(図3)。

図3●組織図の例
図3●組織図の例
[画像のクリックで拡大表示]

■コスト見積りプロセス

 「コスト見積り」プロセスと次に説明する「コストの予算化」プロセスは,「プロジェクト・コスト・マネジメント」知識エリアのプロセスです。

 「コスト見積り」プロセスの主要なアウトプットは,「アクティビティ・コスト見積り」です。WBSのワークパッケージをさらに詳細化したアクティビティ・レベルで,必要な資源を見積り,コストを算出します。コストを見積もって,正式に承認されたものが予算となります。

 PMBOKでは,「コスト見積り」プロセスで,プロジェクトのリスクの大きさに応じた「予備費」を確保しておくことを推奨しています。予備費は,余分なお金ではなく,リスクに対処するためのお金です。ただ,予備費が真っ先に削減されてしまうのが,今の日本の現状かもしれません。