課題分析や要件定義における合意形成の重要性を考えれば,たとえ時間がかかっても,メンバー全員が納得するまで議論を尽くして結論を出すべきだ。反対意見がくすぶったまま議論を打ち切れば,あとで不満が噴出したり,メンバーの参画意識が削がれてその後の会議に支障を来したりする。

 ファシリテータは議論の節々で,メンバー1人ひとりに反対意見がないかどうかを確認する必要がある。例えば,筆者は業務要件を決めていく際に,「目的の実現を阻害している主要な問題」,「主要な問題を引き起こしている本質的な原因」,「主要な問題を解決するために取り組むべき課題」,「課題を解決する新しい業務の仕組み」といったポイントに分けて,反対意見がないか確かめている。

 結論が見えたときファシリテータがいきなり締めに入ると,反論があったとしても出にくい。結論を出すまでに段階を踏むことが肝要だ。

 まず,そこまでの議論の過程を簡単に振り返る。そのうえで複数のメンバーに,議論の過程で出た案のうち,結論とすべきものはどれか(もしくは1つの案について賛成か反対か)を聞く。その際には,もともと結論と違う意見を持っていたメンバーにも,最終的な意見を確認する。

 ファシリテータは議論の過程や結論を確認している間,表情や動作に注意して疑問や異論がありそうなメンバーがいないか目を光らせる。首をひねったり,下を向くメンバーがいたら,指名して意見を聞いてみる。

 どう見ても納得していないが,意見をはっきり言わない人がいる場合は,個別に話を聞いて対処するしかない。そんなとき筆者は,短い休憩を入れて,その人に真意を聞く。そのうえで休憩後に,「こんな考え方があるかもしれませんが,どう思いますか?」という具合に,その人の名前は出さないで意見を紹介し,全員で議論する。


 筆者の経験に基づいて,合意形成を成功させる実践ノウハウを紹介した。ほかにも,読者の皆さんが経験で培った有用なノウハウをお持ちだと思う。自分なりに書き出してまとめたり,後輩に教えたりして,再認識することをお勧めする。