会議に参加していて,何か考え事をしている間に重要な意見が出たり,話題が変わったりして困った経験はないだろうか。あるいは,何を言いたいのか分からない意見が出て質問のしようもなかったことはないだろうか。

 メンバー全員が会議の間ずっと集中して,ほかの人の話を聞いているとは限らない。特に自分の考えを整理しているときは,他人の話はあまり耳に入らないものだ。異なる部署のメンバーが発言する場合は,専門用語の意味が分からないために内容を理解できないことも多い。こうなると議論に参加しにくくなり,発言が極端に減ってしまう。

 そこでファシリテータは,全員が議論に付いてこられるように配慮する必要がある。その方法の1つは,分かりにくい意見や専門用語が出たときに,発言者に内容や真意を再確認することだ。例えば,「板書しますので,待ってください。それはこういう意味ですか?」,「ちょっと理解できなかったので,もう一度おっしゃっていただけませんか?」という具合だ。

 仮にファシリテータが理解できたとしても,メンバーにとって分かりにくいと思ったら,すかさず問いかける。また重要な意見が出たときにも,注意を引きつける意味でファシリテータが言い直すといい。

 もう1つ,「ビジュアル化」も極めて重要である。特に課題分析や要件定義の会議では,業務プロセスや組織関係図を書き出した大きな紙を用意しておき,それを見ながら議論することが多い。論点や解釈のズレを防ぐうえで必須と言える。

 それに加えて筆者は,複雑な議論を理解しやすくするために,原因と結果,目的と手段などの関係を階層構造として表す「ロジックツリー」(注4)を頻繁に書くようにしている。ロジックツリーを書いて分析・整理するスキルは一朝一夕に身に付くものではないが,日ごろから自分で何かを考える際や部署内のミーティングなどで実践して磨いてほしい。

水田 哲郎(みずた てつろう)
日立製作所 ビジネスソリューション事業部 ビジネスシステムコンサルティング部 部長 上席コンサルタント
1990年,日立製作所入社。製造業・流通業の顧客を中心に,業務改革を伴うシステム開発プロジェクトを担当し,コンサルタントとして活躍。日立社内の「コンサルティング力強化プロジェクト」でリーダーを務め,ファシリテーションを含むコンサルティングの標準技法を開発した