電車の車内に設置しているデジタルサイネージ「トレインチャンネル」が順調に売り上げを伸ばしている。運営するジェイアール東日本企画(jeki) 交通媒体本部 媒体開発部 部長の山本孝氏は,「サービス開始以来,毎年売り上げが増加している」と説明する。デジタルサイネージによる広告売り上げをさらに伸ばすため,jekiは駅に注目し,デジタルサイネージの端末設置を積極的に進めている。

 具体的には「デジタルポスター」と呼ぶ液晶ディスプレイを縦向けに設置したデジタルサイネージである。液晶ディスプレイは65インチを利用している。現在はJR東日本(東日本旅客鉄道)の東京駅(京葉線連絡通路),品川駅,横浜駅,五反田駅に設置・稼働している。2009年7月1日には秋葉原駅や東京駅(中央通路)でも稼働させ,5駅6カ所で約40台のデジタルポスターを設置することになる。山本氏は,「デジタルポスターは2009年度中にさらに増やす計画である。山手線の駅を中心に首都圏内で10カ所,100台の設置を予定している」と語る。

 デジタルポスターは,動画を主体とするトレインチャンネルにない新たな試みに取り組んでいる。それはデジタルポスターのコンテンツを静止画にすることと,設置場所の工夫で広告効果を上げようと志向していることである。静止画の採用について山本氏は,「デジタルポスターはトレインチャンネルのように見る人が止まっていないことが多い。その状況で動画を流しても印象に残らない」と説明する。ただしそのまま通り過ぎる人もいる。そこで通行人に目を向けてもらうために静止画の切り替え時にチャイム音を鳴らすことも一部で試行している。

 設置場所の工夫とは,デジタルポスターを連続で見るような場所に設置していることだ。例えば東京駅京葉線連絡通路は直線の通路の中央部分に,一定間隔でデジタルポスターが並んでいる。一つのデジタルポスターの静止画を見て少し進むと,また同じデジタルポスターの静止画が目に飛び込んでくるシカケになっている。

 また,デジタルポスターを柱の複数面に設置することも試行している。例えば京葉線連絡通路の場合,四角い柱の2面にデジタルポスターを設置している。京葉線のホームに向かう通行人と京葉線のホームから戻ってくる通行人で,見えるデジタルポスターを変えられるようにしている。通常,サーバーの台数や通信回線の節約のため,インターネット経由で画像や動画を受け取るサーバーは1台として,そこに複数台の液晶ディスプレイを接続し,同じ画像を表示する場合が多い。

 今はこうしたコンテンツの見せ方や設置場所を駅ごとにバラバラにしている。例えば五反田駅では,通路ではなく改札にデジタルポスターを設置している。京葉線連絡通路のように連続性も持たせず,改札を出た瞬間に,目の前にデジタルポスターが見えるような位置に設置している。接地面も品川駅では柱の4面すべてにデジタルポスターを設置している。静止画の表示時間も東京駅や品川駅は1分だが,五反田駅は30秒で入れ替えている。広告の販売期間も,週単位で売る駅もあれば月単位で売る駅もある。こうした違いについて山本氏は,「わざと統一性を持たせていない。電車の車内とは違い,駅では成功事例がないため,何が正解かはまだ分からない。バリエーションを持たせて効果を検証していくことが大事だと考えている」と語る。