本研究所では、日本と海外のIT技術およびその利用方法を比較し、両者の間にある格差について考えている。今回は、米国オバマ大統領のグリーンニューディール政策に絡んだ話題に注目したい。その一環でもある「スマートグリッド」という分野について考察してみよう。
そもそも、スマートグリッドとは何なのだろうか?グリッドコンピューティングやクラウドコンピューティングといったものと何が違うのかと思う方がいるかもしれない。Wikipediaによれば、スマートグリッドとは、「エネルギーとコストを節約するために、情報技術をもちいて供給者と消費者のあいだの電力伝送をおこなう技術のこと」となっている。
電力網の老朽化問題も抱える米国
スマートグリッドが目指すのは、電力網をコンピュータで制御し、より高効率な電力配給を実現することである。米国ではそもそも、電力網の老朽化という問題もあり、「どうせ新しくするのであれば、より進化したものに」という発想もあったのだろうと考えられる。
スマートグリッドを調べていくと、「スマートメーター」という言葉にたどり着くはずだ。しかし、このスマートメーターも、よく分からない。「スマートメーターって知ってる?」と聞かれて、きちんと答えられる人が何人いるだろうか。日経エレクトロニクス誌の用語集は、スマートメーターを次のように説明している。
これまで電気メーターを人力でチェックしていたものが、ネットワークでつなぐことで見える化し、さらに電気を使いすぎている場合には制御したりするための機器ということのようだ。
スマートメーターを使って集めたデータを共有しようという動きもある。米グーグルの「PowerMeter」である(図1)。
地球全体の電力使用量を可視化する
PowerMeterについては、あまり詳しくは説明されていない。例えば、いろんな家電製品が通信可能になり、それぞれの消費電力をハードウエアから取得し、それを無線か有線でインターネット経由で一旦サーバーに送る。ユーザーは自分のPCからブラウザによって電力消費量を通しチェックする。
電力使用量を抑えるとか、再生可能エネルギーをより多く取り入れる、あるいは、自らが再生可能エネルギーで発電するなどの取り組みは、電力網が「スマート」であれば可視化しやすいはずだし、実際に地球にもやさしい。それをPowerMeterで可視化すれば、今地球上でどのくらい電力が使われているかが分かり、そのためにどれだけのCO2(二酸化炭素)が出ているかも理論上、算出可能になるであろう。
こうした仕組みは、今の日本の電力網のあり方からは想像が難しいかもしれない。スマートグリッドについて、グーグルはかなり力をいれている。日本では、村上憲郎名誉会長が中心になって進めているようだ。いろいろな場面で積極的に講演されている。