「21世紀は業務部門とSE(システムエンジニア)が協力して新しいビジネスプロセスを設計する時代だ。SEの重要性はさらに増す」。東京海上日動火災保険の横塚裕志常務取締役は2009年5月14日、富士通が開催した「富士通フォーラム2009」に登壇しこう述べた。講演内容を基に横塚常務のSEへのエールをまとめた。(日経コンピュータ)

 私はSEの仕事が大好きです。入社以来36年間、ほぼSE一筋でやってきました。なぜ好きなのかを説明するのに最適なエピソードを紹介します。東京海上日動火災保険の保険代理店の方を東京・多摩センターの開発・運用拠点に招き、講演をしていただいたときのことです。2008年5月に稼働した新システムへの感想を聞きました。

 次のような言葉をもらいました。「すばらしいシステムを作ってくださってどうもありがとう。代理店として頑張っていられるのは商品やシステムがあればこそだと感謝しています」。

 聞いた瞬間、4年がかりで新システムを構築した疲れが吹っ飛びました。SE冥利に尽きます。我々が作ったシステムが代理店さんのビジネスに役立っているのです。SEをやっていてよかったと改めて思いました。というわけで、今回はSEの仕事は素晴らしいということをお伝えします。

受注型からサービス提供型へ=SEの仕事は変化している

 いま、まさにSEの仕事を大きく変える時代がきたと思います。SEは仕事をどう変えていくべきなのか。具体的に四つ申し上げます。ここで言うSEとはシステムの開発や運用に携わる人全体のことです。一般企業のIT部門やシステム関連会社、システム開発を専門とするIT企業といった所属先による区別はありません。

 一つめは、発注者の言うとおりにシステムを作る「開発受注型」から、発注者が必要とするサービスを提供する「サービス提供型」に変えるということです。システムを開発するだけでは不十分。使い勝手も求められます。操作スピード、画面の見やすさといった部分です。システムが止まらずにずっと使えることも重要です。機能、使い勝手、ノンストップ稼働の3点セットがそろって初めて「サービス」になります。要件を満たすシステムを開発すればいいというわけではありません。

 サービスであるからには、システム以外も含めたビジネスプロセス全体をカバーする必要があります。例えばある保険を売るための全体的なサービスの提供を求められたとき、SEは先ほどの3点セットを備えたオンラインサービスを提供するのはもちろん、手作業の事務処理をこなす事務センター、代理店からの問い合わせを受け付けるヘルプデスクまで用意しなければならないかもしれません。

サービスの真髄は安定稼働

 サービスの真髄は、いつでも黙って安定的に動いているということです。冒頭の代理店の方には次のように言われました。「動かなくなったらどうなるかを考えたとき、システムは空気や水のように大切な存在という意識を持ちました」。機能が一つや二つなくとも、安定して稼働しているほうがよほどいい、とさえおっしゃっていました。

 我々は、どちらかというとシステムの運用よりも開発をかなり優先的に考えてきた経緯があります。いかに効率的に作るかを重視してきました。ところがシステムをサービスとしてとらえると、安定的に稼働させる重要性がものすごく高まります。システムの運用をどう進めるかを改めてきっちり認識する必要があると感じています。運用手順をなるべくシンプルにする、あるいは処理のピークをどう乗り切るかということを考えなければなりません。

 最近の機械はすぐに壊れるので、壊れたときのリカバリをどうするか。地震やバックアップのときの対応をどうするか。こうしたシステムの運用に光を当てることが改めて問われていると思います。