エンタープライズ向けUPSの主なモジュールを図3に示した。電圧昇降や交流(AC)と直流(DC)の変換などを担う「整流器」と「インバータ」,電気を蓄える「バッテリー」,落雷時に発生するサージを遮断する「サージ・プロテクタ」,UPSの状態を外部に知らせる「インタフェース」などから成る。

図3●UPSの主なモジュール<br>UPSには,交流を直流に変換する整流器や,直流を交流に変換するインバータがある。バッテリーは複数個収納することが可能。このほかサージを遮断するサージ・プロテクタや,ノイズを取り除くノイズ・フィルター,外部にUPSの状態を知らせるインタフェースがある
図3●UPSの主なモジュール
UPSには,交流を直流に変換する整流器や,直流を交流に変換するインバータがある。バッテリーは複数個収納することが可能。このほかサージを遮断するサージ・プロテクタや,ノイズを取り除くノイズ・フィルター,外部にUPSの状態を知らせるインタフェースがある
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 電気の質を高めるのが整流器だ。整流器はまず,電圧低下や過電圧となった交流を「トランス」を使って90~110Vの電圧に昇降する。次に,「トランジスタ」を使って順方向(+)の電流を通し,逆方向(-)の電流を反転させ,交流を直流に変換。ただしこのままでは波状の電圧変動が残った状態なので,「コンデンサ」を使ってなだらかにする。こうしてできた安定した直流をバッテリーに受け渡す。

 UPSに搭載されるバッテリーは,鉛電池を使うのが一般的だ。バッテリーは通常,UPSに複数個搭載する。これは,電気を供給する時間を長くするためではない。電圧を低下させない工夫である。各バッテリーを直列につないで出力を高めている。UPSのバッテリーは,寿命に注意したい。カタログ上は約5年となっていることが多いが,これは温度が25度の場合だ。UPSをサーバーと一緒にラックに収納すると温度は高くなりがち。仮に40度の場合,バッテリーの寿命は約2年となる。なお,TDKラムダなど一部のメーカーでは,長寿命なリチウム電池を使ったUPSを提供している。

 サージ・プロテクタは,落雷時に発生するサージからサーバーやストレージ機器を守るモジュール。サージを取り除く方法はいくつかある。「ローパス・フィルター」を使った場合,コンデンサによって高周波の高電圧を取り除き,それを抵抗などで外に逃がす。ノイズ・フィルターも同様の仕組みでノイズを取り除く。

 このほかUPSは,状態を外部に通知するインタフェースを持つ。停電,電圧低下,バッテリーの寿命,部品の故障など,システム停止に直結する状況を即座に伝えるためだ。インタフェースには,RS-232C,USB,LAN,接点(リレー)などがある。USBやLANのインタフェースは,ここ最近追加され始めたものである。