停電してもしばらくの間,コンピュータに電気を供給するUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)。システムの可用性を高めるために,もはやなくてはならない装置の一つとなっている。

 しかし,ひと口にUPSといっても,その種類はさまざまだ。機能や特徴を理解しないと,最適な機器の選定や,想定したサービス・レベルの達成はおぼつかない。そこでこの特集では,UPSの機能や種類,構成部品,可用性を高めるための配置などについて図解する。

数々の障害が潜む商用電源

 電源にまつわる障害は,停電だけではない。電気事業者が供給する「商用電源」には,発電所からオフィスに送電/配電されるまでに,数々の障害が発生する可能性がある。例えば,通常時の交流電源は90~110Vだが,落雷時には「サージ」と呼ばれる数百Vの高電圧が生じる。近くの工場で一斉に工作機械などが稼働すると80V程度の「電圧低下」に陥りやすい。瞬間的に電圧が低下する「サグ」,送電装置や電子機器のスイッチなどで発生する「ノイズ」も電気に混じる場合がある。

 こうした数々の電源障害は,サーバーやストレージ機器,ネットワーク機器の誤作動や故障を引き起こす原因となる。そのため最近のUPSには,電源障害を取り除くという電気の“質”を制御する仕組みも備わってきた(図1)。

図1●UPS(無停電電源装置)の機能<br>電気事業者が供給する「商用電源」には,さまざまな障害が発生する可能性がある。UPSでは,停電時に一定時間の電気を供給するほか,こうした障害からサーバーなどを保護する機能を備えている
図1●UPS(無停電電源装置)の機能
電気事業者が供給する「商用電源」には,さまざまな障害が発生する可能性がある。UPSでは,停電時に一定時間の電気を供給するほか,こうした障害からサーバーなどを保護する機能を備えている
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