英BTグループ テクノロジー&イノベーション 日本・韓国担当副社長 ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 数日前,日本滞在中に日本の携帯電話を使って英国の友人にSMS(short message service)を使ってメッセージを送ろうとした。友人のスケジュールを確認すると会議中と分かったので,電話ではなくSMSにしたのだ。しかし何回か送信を試みたが,結局送れなかった。不審に思いサービスセンターに問い合わせたが,その答えに私は驚いた。私の端末からは,英ボーダフォンのユーザーにSMSを送れないというのだ。しかし,ボーダフォン・ユーザーから私の端末には送れる。

 SMSは世界的に利用され,特に若者にとってはコミュニケーションの主流となっているサービスである。今では世界で20億人のSMS利用者が存在する。これはインターネット利用者の2倍にも上る。それなのに日本だけがなぜ,満足にSMSがつながらないのか。

遠隔測定用として始まったSMS

 欧州のSMSの標準化作業は,携帯電話のGSM方式の一部として1985年に始まった。当時のSMSは音声通信の陰に隠れた存在で,将来主流のコミュニケーションとなり,しかもこれほど大きな収益を上げるサービスになるとは誰も思っていなかった。

 1986年,BTの研究所に勤務していた私は,CEPT(欧州郵便電気通信主官庁会議)のGSM標準化の作業に参加した。SMSは最初,遠隔測定用として作られ,ネットワーク構築作業のテストに使用していた。SMSは信号チャネルを使って送信するため,音声通信ができないような電波状態が悪い場所でもメッセージを送受信できる。

 世界初のSMSは1992年12月初め,ネイル・パップワースという名のエンジニアが英ボーダフォンのネットワークを使って,彼のパソコンから携帯電話に向けて“メリー・クリスマス!”というメッセージを送ったのが最初である。その後,SMSはしばらくの間ぱっとしない時期を過ごすが,1999年に多くの通信事業者の間で相互接続が実現したことで一気に拡大した。

 そのメッセージ数は急速に拡大し,英国では2008年の1年間に800億メッセージが送信されたという。一つのネットワーク上で1日にやり取りされた最高記録としては,欧州の携帯電話事業者O2が2009年の元旦に1億6000万のメッセージを送信したという記録がある。さらにフィリピンでは,ユーザー1人当たり1日平均15回のメッセージをSMSで送ったという記録もある。

 世界で急激にSMSの送受信が増える一方で日本ではどうだろう。NTTドコモのショート・メールやKDDI(au)のCメールのような同一事業者内のSMSはあるが,事業者をまたいだメッセージはいまだ送信できない。これが利用者の増加を妨げている原因だろう。

 短期間でSMSが日本のすべての携帯電話事業者間で接続され,さらにグローバルにもつながるというのは難しいかもしれない。しかし世界のSMSビジネスは1000億ドルを超える規模に拡大している。今からでも日本が参画して,グローバルSMSビジネスの一角を占めるのに遅くはないと思う。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 最近の世界の株式市場の動きは,世界経済が抱えていた問題が表面化したものだ。株式市場は,通常実態経済の6カ月から12カ月先を走る。だから私は株式市場の動きを実態経済以上に注目している。そのほかの私の関心は,2010年に南アフリカで行われる2010 FIFAワールドカップ。この世界最大のスポーツ・イベントで,スタジアムも含めて主催者の準備は滞りなく進められているのだろうか。