2001年の通信関係の主な出来事

●政府が「インターネット博覧会─楽網楽座」(通称インパク)を開催(1月から12月まで)

●中央省庁の再編が実施。総務庁と郵政省,自治省を統合して総務省が誕生(1月)

●東西NTTがFTTHサービス「Bフレッツ」を開始(6月)

 まさに日本のブロードバンドの歴史が動いた瞬間だった。2001年6月19日,ユニクロのシャツに身を包んだソフトバンクの孫正義社長が,東京・虎ノ門のホテルオークラでADSLサービス「Yahoo!BB」を発表した。

 ソフトバンクが設定した月額料金は,当時のADSLサービスの相場のほぼ半額である2467円。しかも最大通信速度は8Mビット/秒と,他事業者が提供していた最大1.5Mビット/秒を大きく凌駕する内容だった。ユニクロの服を“安くて良いもの”にかけた,孫社長流の会見と言えた。

 この破壊的な価格に,ダイヤルアップ接続がほとんどだった多くの日本のユーザーが飛びついた。殺到したユーザーをソフトバンク側が処理しきれず,開始時期が当初の2001年7月から9月へと延びてしまった。それでも,Yahoo!BBは開始半年で全ADSL契約者のシェア2割となる49万ユーザーを獲得。街頭でモデムを配る「パラソル部隊」も貢献し,2002年9月には100万ユーザーを突破した。

 この間,セキュリティ問題やサポートの不備などいくつかのトラブルがあったものの,累計加入者数でNTT東日本を抜き去り,日本のブロードバンドをけん引する存在となった。

他社も値下げへ,爆発的普及を促す

 Yahoo!BBの登場によって,他の事業者も大幅値下げを断行した。まずはアッカ・ネットワークスとソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)が7月に値下げを発表。主要プロバイダ各社も後に続き,ADSL回線とプロバイダ料金を合わせた料金水準は月額5000~6000円から3000円~4000円程度に下落した。

 フレッツ・ISDNの延命のため,大幅な値下げに踏み切れずにいた東西NTTも,12月にフレッツ・ADSLの料金を2000円台まで下げた。こうした事業者間の激しい競争によってブロードバンドの加入者は飛躍的に伸び,日本を世界有数のブロードバンド大国へと押し上げた。

第3世代携帯電話がスタート

 2001年は,今や携帯電話の主役となった第3世代携帯電話(3G)が始まった年でもある。NTTドコモは2001年10月1日,世界初となる3Gの商用サービス「FOMA」を開始した。最大28.8kビット/秒だった第2世代携帯電話と比べて1けた速い最大384kビット/秒の通信速度と,テレビ電話などのマルチメディア・サービスを武器にユーザーへの浸透を図った。

 しかし開始当初は苦難の連続だった。ユーザーからは「端末が大きい」「電池が持たない」「エリアが狭い」という不満の声が上がり,加入者数は低迷。さらに世界初を急ぐあまり国際標準との食い違いも生まれ,ドコモは後にネットワークを改修するという苦い経験をすることになる。

 そんなFOMAも,端末の型番を900iにした2004年ころから徐々に課題が解消していく。以後3G携帯電話は急速に普及,モバイルからのネット・サービスの利用拡大を後押しした。