今回も,アルバイトの鶴橋さんとの会話から,5月に売れた書籍を振り返っていきましょう。

「毎回,冒頭で新刊のご紹介をしてきましたが,今回取り上げる本はちょっと特殊かな?この本,実はまだ刊行されていません」
「なら,出てからちゃんと紹介すればいいじゃないですか!」
「でもお知らせはしとこうと思って。取り上げたい本はこれ,PMIから出される『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド 第4版』,略称PMBOKで『ピンボック』って呼ばれてます。英語版は2008年の年末に発刊されてるけど,日本語版の刊行がいつになるか,ずっとはっきりした情報が流れてこなかった」
「現在の第3版が出たのは2005年ですか…」
「4年ぶりの新版。これは何しろPMP(Project Management Professional)資格の学習に必要な標準書だからね。今回は第3版のときほど大きな内容の改訂はないらしいんだけど,新版が刊行されたらそちらで学習することが推奨されているようだ」
「これって取次ぎを通さないで入ってくる書籍でしたよね。で,いつ出るんです?」
「それがまだはっきりした日付が出ていないんで困ってるんだ。6月末には刊行されるという情報もあったんだけど,どうやらもっと先になるらしいね。出るのは確からしいんだけど。PMI日本支部のサイトを見ても,その辺がどうもよくわからないんだ。それで,鶴橋さん,この本ビジネスの売り場でも売れているけれど,一番売っているのはコンピュータ書の売り場だからね」
「小林さん,ビジネス書売り場に対抗意識持ってる?」
「まあ,なんにせよ,どうしても置かなくちゃいけない商品だから。とにかく刊行されたらドーンと積もう,鶴橋さん。俺は売るよ」

「さて,5月のベストです!」
「第1位は日経BP出版センターの『クラウド大全』か」
「2位が秀和システムの『最新ITIL V3の基本と仕組みがよ~くわかる本』で,先月の1位と2位がちょうど入れ替わった形ですね」
「3位も朝日新書の『クラウド・コンピューティング』と,相変わらずクラウド関連書は強いよ。各社からも一応出るものは出そろったことだし,まだまだいけるんじゃないかな」

「ところで下の順位までずーっと見ていくと,これって今回はわりと変わり映えしないベストとも言えるんじゃないですか?」
「鶴橋さん,意地の悪いこと言うねえ。4位が翔泳社の『ITILファンデーション』だし。でも5位がオライリーの新刊…」
「『リファクタリング・ウェットウェア』って,このタイトルじゃ何の本なのかわかんないですよ」
「まあ,オライリーだからねえ。ネットワークとしてとらえた『脳』のことを,ウェットウェアって言うみたいだね」
「最近『脳』に関した新刊って多いですね。テレビでも関連の番組,よく見ますよ」
「今度ひとつ『脳』のフェアでもやってみるかなあ」

「6位が,これは私も個人的に注目,日経BP出版センターの新刊『まつもとひろゆきのコードの世界』!表紙に大きく写っていらっしゃるのがまつもと先生ご本人です」
「鶴橋さん。この人って,何で有名なんだっけ?」
「何言ってんですか,小林さん!世界的に有名なプログラミング言語Rubyの開発者じゃないですか!」
「あ,このおじさんがそうなのか」
「ひっどいなあ。でも,この本売れてるのにストック薄いですよ,大丈夫ですか?小林さん」
「ちょ,ちょっと,フロア長に聞かれたらむちゃくちゃまずいことを大声で言わないでよ,鶴橋さん。ちゃんと重版出来次第で入ってくることになってるから安心して」
「本当ですかあ?」

「7位がオーム社の『クラウドコンピューティング』。8位が技術評論社の『WEB + DB PRESS Vol.50』か」
「9位の日経BP出版センターの『システムはなぜダウンするのか』とアスキーのムック『ゼロからはじめる超入門ネットワーク』は,特に新刊というわけでもないのに,今月は売れてますよね」
「うん,既刊書でも,改めて積んでみるとけっこう売れたりするから。この間も秀和システムのクラッキング防止技術に関する本を積んでみたけれど…」
「あれですか? 『解析魔法少女美咲ちゃんマジカル・オープン!』っていう信じられないタイトルの本…」
「書名と表紙は信じられないけれど,内容はちゃんとした本だよ。これが1カ月で最近1年間を超える数を売ったものな。本屋として,そういう埋もれた本も発掘していかなくちゃ。とはいえ,それが難しいんだけどね」
注:アルバイトの鶴橋さんは架空の人物です。