「みんなの就職活動日記」や「楽天ブログ」といったCGM(消費者生成メディア)を手がけてきた伊藤将雄氏。同氏は今、アクセス解析に特化したサービスを展開するユーザーローカルを立ち上げ、アクセス解析ブログパーツ「なかのひと」や、携帯電話向けサービス「うごくひと」を提供する。開発者としての趣の強い同氏に、インターネットにおけるサービスのあり方などを聞いた。(聞き手は島田昇=日経コンピュータ)

アクセス解析は何のために手がけているのか。

 インターネット全体のサービスレベルの底上げにつながるためだ。インターネットの世界では、個別の利益を追求するサービスの伸びには限界がある。インターネット全体のことを考えたサービスでなければならない。インターネット全体の底上げにより利用者が増え、市場が広がることで、サービスが支持を受け最終的な利益を享受できる。

 グーグルの成功の本質も、インターネット全体が便利になる検索エンジンを開発したことだ。楽天の成功も、全国の店舗が商圏を拡大できるようになるというところに本質がある。

 ユーザーから支持されないサービスは、ユーザーの需要をきちんと見極めるための努力や思いやりが足りないというところに本質的な原因があると考える。サービス業は何よりも、ユーザーを見ることがすべてにかかわる第一歩だ。すなわち、すべてのサービス業は、顧客のことを考えられる人が勝つゲームだと言える。

 アクセス解析は、そのための重要かつ有効な手段である。これまでは専門的な知識やノウハウが必要だった。だが当社は、どんな人が、どのようにサイトを見ているかを比較的簡単に分析できることを支援する。そのために、どんな組織からどんな属性の人がサイトを訪問しているかが分かるアクセス解析ブログパーツ「なかのひと」と、携帯電話向けサービス「うごくひと」を無料で提供している。有料ビジネスとしては、どんな属性の人がサイトをどのように見ているかをヒートマップで見られる「ユーザーインサイト」を展開している。

 当社サービスを活用することで、コンテンツを作っている人が「お客様を見る」ということへの意識を高め、いいサービスを作ることに集中できるようになってほしい。

かつては「みんなの就職活動日記」などメディアを手がけていた。

 当社の設立は2007年10月だ。それ以前は楽天で「みんなの就職活動日記」や「楽天ブログ」など、主にCGMの開発・運用を手がけていた。そこでアクセス解析に興味を覚えた。楽天退社後に大学院へ進学し、今に至っている。

 元々は、新卒で日経BP社に入り、記者をしていた。みんなの就職日記は学生時代から始めていたもので、社会人になってもボランティアで運営していた。その時に感じたのは、記者が1日に10社以上取材してそれらすべてを記事にするのは難しいが、みんなの就職活動日記のようなCGMなら、10人以上の人が10社以上の記事を書くことは難しいことではないということだ。

 当然、記事の内容にはバラつきがでる。それでも、従来の雑誌などの媒体を中心に記者が取材・執筆するスタイルではなく、たくさんの人がインターネット上に集まってコンテンツが生まれるという流れが面白いと感じていた。