IPネットワークの使い道が広がっている。メールやWebアクセスといったデータ通信だけでなく,IP電話やテレビ会議のようなアプリケーションにも使われるようになってきた。

相手呼び出しの本命プロトコル

 IP電話やテレビ会議などのアプリケーションに欠かせないのがSIP(session initiation protocol)というプロトコルだ。必要に応じて相手を呼び出し,相手との間で音声や動画をやりとりするための通信路を作るのがSIPの役目である。

 SIPは,例えばIP電話をかけるときに,相手を呼び出して音声の通り道を作るところで働く。発信側のSIPが相手に接続を依頼し,発着信両側のSIPが通り道の情報を交換する。また,電話で相手を呼び出しているときに呼び出し音が聞こえるのも,相手のSIPが途中経過を連絡してくれるからだ。

 SIPは,インターネット技術の標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)が,「RFC3261」として仕様を決めている。また,インターネットで標準になっているだけでなく,通信事業者の次世代ネットワークであるNGN(next generation network)でも相手を呼び出すプロトコルとして採用される。IP化が進むネットワークで相手を呼び出してつなぐための標準技術というわけだ。

目的や役割をしくみと一緒に解説

 今回は,そんなSIPについて学ぶことにしよう。Lesson1~Lesson4の構成で,SIPの考え方と全体像を学んでいく。

 まずLesson1でSIPの目的と役割を説明する。Lesson1を読めば,SIPが何のためにあり,どんな仕事をするのかが見えてくるだろう。

 Lesson2では,SIPが相手を呼び出してデータの通り道を作る方法を解説する。通信を始めるまでにSIPがやりとりするメッセージの内容と手順に,SIPの本質がある。

 データを転送する通り道を確立するための情報は,やりとりされるメッセージに書き込まれる。やりとりの手順を追えば,相手を呼び出して通り道を作る方法がはっきり理解できる。一方,切断のやりとりは単純だがSIPには欠かせないもの。こちらも押さえておきたい。

 続くLesson3では,SIPのやりとりを助ける「SIPサーバー」について見ていこう。SIPを使うアプリケーション同士は,直接相手とやりとりするのではなく,SIPサーバーを中継することが多い。こうしたサーバーの役割を説明する。

 Lesson4では,SIPの付加機能を説明する。RFC3261以外のRFCで,SIP向けのさまざまな付加機能が定義されている。それらを使えば,例えばIP電話では保留や転送といった複雑な処理が可能になる。

 最後にSIPについての理解度をチェックする修了テストを用意した。解けなかった問題があれば,該当するLessonを読み返してみよう。そうすれば,SIPについて体系だった理解が身に付くはずだ。