エーピーシー・ジャパン
ソリューション事業部 プラットフォームエンジニアリング部
プラットフォームエンジニア
山本 武

 電源システムの電源容量は十分であったとしても,無計画な増設は末端で過負荷障害のリスクが生じる。また,2重化電源やデュアルコード機器も正しく使用しないと負荷を適切に保護できない。設計だけでなく,運用が始まってからもいろんな注意が必要である。

計画性のない機器の増設は危険

 ラックに搭載するラックマウントPDUの容量が決まっているのは当然だが,運用に入った段階ではそのことを見落とす恐れがある。仮にサーバーラック1面に対し,ラックマウントPDUが1個付いていて,そのPDUには15Aのコンセント出力が数個付いているとする。ラックマウントPDUの上位分岐ブレーカ容量は通常20A程度であるが,これはラックマウントPDUのコンセントを保護するためである。つまり,そのラックマウントPDUにコンセントがどれだけ付いていても,負荷電流合計は20Aしか流すことができない(図1)。

図1●ラックマウントPDUの容量に注意する
図1●ラックマウントPDUの容量に注意する

 もしラックの空いたスペースを優先して,サーバーなどを増設していった場合,搭載台数が過多になり電源容量的に過負荷となることはありえる。ただし,搭載されたサーバーの稼動状態が低ければ電力消費量も少ないため,実際には過負荷にはならないかもしれない。容量的には過負荷になっている,ということにも気づかないだろう。

 しかし,そのラックに搭載されている全てのサーバーがフル稼働状態になるというのは十分あり得ることである。そのときはじめて過負荷となり,上位の分岐ブレーカがトリップするといったことになりかねない(図2)。

図2●過負荷によりブレーカがトリップする恐れも
図2●過負荷によりブレーカがトリップする恐れも

 データセンターの設備が大きくなるにつれ,一部のサーバーやラックの消費電力の変動は,全体から見ればわずかなものかもしれない。1台のラックの消費電力が数kW変動しても,電源システム全体の容量からすると影響のない程度と無視されるだろう。だからこそ,電源設計とその運用において,分岐回路レベル(もしくはラックレベルで)供給可能な電力はどれぐらいかを正しく把握し,搭載するIT機器の消費電力と数量を正しく管理することが必要である。