携帯電話や携帯端末のOSやプラットフォームは,事業者やメーカーによって異なっている。このため現状では,ソフトウエアの開発者が様々な端末に向けてアプリを配信しようとすれば,それぞれのプラットフォームに向けた個別のアプリを開発する必要がある。

 この「アプリの断片化問題というべき状態を解決することを目指した仕様がBONDIだ」とOMTPのティム・ヘイソン最高マーケティング責任者(CMO)は説明する。異なる事業者,異なるOS,異なるWebエンジンの上でも動作するウィジェット/Webアプリを実現する。開発者は一つのウィジェット/Webアプリを作るだけで世界中のBONDI対応携帯電話に向けて配信できることになる(図1)。

図1●プラットフォーム非依存にすることでアプリケーション開発を活性化<br>従来はウィジェットやWebアプリの開発者が異なるプラットフォームごとに個別のウィジェット/Webアプリを開発する必要があった。BONDIでは,プラットフォームの違いを吸収する仕組みを提供することで,ウィジェット/Webアプリ開発の活性化を目指す。
図1●プラットフォーム非依存にすることでアプリケーション開発を活性化
従来はウィジェットやWebアプリの開発者が異なるプラットフォームごとに個別のウィジェット/Webアプリを開発する必要があった。BONDIでは,プラットフォームの違いを吸収する仕組みを提供することで,ウィジェット/Webアプリ開発の活性化を目指す。
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 しかも,HTMLやJavaScriptで記述するため,Javaなどのプログラミング言語を使う従来のアプリと比べて簡単に開発できる。BONDIによって開発者にとって有利な条件が整い,数多くのアプリケーションやサービスが生み出される土壌が出来上がるというわけだ。

 新たな開発者の参入によって数多くのウィジェット/Webアプリが登場するようになれば,「より多くのユーザーを引き付けることができ,大きな成長につながる」(OMTPのヘイソンCMO)。ユーザーには,端末によらず同じウィジェット/Webアプリを利用できることから,今まで以上に利用する端末を自由に選択できるメリットもある。

「携帯らしく,安全かつ柔軟に」

 BONDIでは,パソコン向けのWebページと同様のオープンな標準規格を目指している。パソコンのWebブラウザで表示することを想定したWebページは,W3Cなどが定めるHTMLの標準仕様に従って記述されているため,端末メーカー,機種,搭載しているWebブラウザの種類によらずに表示できる。パソコン分野では,こうした互換性の土壌があったからこそ「Web 2.0Ajax環境で,SNSなど膨大な数のユーザーを集めるサービス市場を作り上げることに成功した」(OMTPのヘイソンCMO)。携帯電話でも,これと同じことが言えるはずだ。

 そこで,端末の種類にかかわらず実行できるようにするため,標準的なWeb仕様を積極的に取り入れた。例えばウィジェットの実装方法については,W3Cが定めるWidgets 1.0を採用。Ajax関連ではOAAが定める仕様を取り入れていく方針である。

アドビのFlashなど独自推進派も混在

 BONDIが統一仕様を策定しようという動きの中で,独自のアプリ実行方式を貫こうとする動きもある。例えば米アドビシステムズのFlash。現在,ゲームなど携帯電話向けのWebアプリとして使われている。

写真A●jig.jpのウィジェット機能
写真A●jig.jpのウィジェット機能
ウィルコムが4月末に発表した新端末で採用された。

 BONDIの「ウィジェットが実現しようとしているネット接続で軽量で動くという特徴は,Flashで既に実現している」(米アドビシステムズのプラットフォーム部門 パートナーデベロップメント&テクノロジーストラテジー担当 アヌープ・ムラーカディレクター)として,今後も大きな変化はないと展望する。アプリの普及には「開発者の数が大切。我々のFlashというプラットフォームに対して何百万という開発者が取り組み,今後も広がっていく」(ムラーカ氏)と強気の姿勢を崩さない。開発ツールを用意するなど開発者のサポートを強化するとともに,実行環境の機能を強化し,より高機能なWebアプリの実現を目指すという。

 国内では,jig.jpが2007年半ばから,「jiglet」と呼ぶJavaアプリとして動作するウィジェットの実行環境を提供している(写真A)。NTTドコモやソフトバンクの端末で動作するほか,最近ではウィルコムの手帳型端末WILLCOM NSでも採用された。

 「最近登場したウィジェット機能は最新の端末しか対応していないが,jigletであれば,2~3年前の古い機種でも使える」(jig.jpの取締役 岸周平COO)という特徴がある。今後は海外展開も推進する。海外では日本と比べて処理能力の低いものの,Java対応端末が多いため,潜在的なニーズは高いという。