経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 前々回(第15回)前回(第16回)では、私がIT(情報技術)業界にいるダメな“コンサルタント”について、あえて厳しく指摘しました。ここまではコンサルタントを目指す個人に関する話でしたが、今回は「コンサルティング機能の強化」を掲げるシステム会社の話をしたいと思います。

 システム会社の多くが、コンサルティング機能の強化を課題としています。この数年、システム会社とコンサルティング会社の間で合併・買収の動きも相次ぎました。その理由は明白で、いわゆる「上流シフト」と「単価の改善」の2つに尽きます。

 システム会社間には下請け構造があり、しかもそれが多重化しており、いずれの会社も1つ上のポジションに上がりたいと考えています。一番上がユーザー企業から直接委託を受ける元受けであり、どのシステム会社もこれを狙っているのです。

 一方、システムは最初に計画を立て、次に設計し、さらに細かく設計し、そして開発と呼ぶ製造工程に入ります。基本的には、元受けほど最初の工程を担当し、下請けほど後の工程を担当しますので、元受けへのシフトは「上流シフト」とも呼ばれています。同時に、上流の工程ほど技術者の単価が高いので、上流シフトと単価改善は、同義語のように使われています。

コンサルティング強化は単価アップの特効薬なのか?

 システム会社の経営者が、何かあれば即座に契約を打ち切られる下請けではなく、できるだけ上流シフトしたいと考えるのは当然のことです。どの経営者も「コンサルティング強化」といっています。ところが、ほとんどの経営者はそこまでしか、いえません。その先どうするかをいえないのです。

 私は、個人としてコンサルタントになりたいという若い人に対しては、できる限りの助言をしたいと思っています。一方で、システム会社の経営者・幹部が、何の仮説も持たずにただただ「コンサルティング機能を強化したい」といっていることには、ウンザリするばかりです。

 多くのシステム会社が、コンサルティング機能強化のために「ソリューション事業部」といった部門を作り、そこに所属するコンサルタントを中途採用します。ソリューション事業部では特定のシステム製品を顧客に紹介するわけですが、この時コンサルタントが活躍します。製品に詳しいコンサルタントがユーザーとの接点を担当し、製品をそのまま使う部分と追加開発する部分が定まったところで、開発担当部門の仕事が始まります。

 もともと下請けで仕事をすることが多い会社であれば、コンサルタントを採用することで元受けができるならば、それだけで効果があると考えることもできます。しかし、中途採用のコンサルタントと、元からいる“システム屋”との間に何らかの相乗効果を期待するとすれば、それはなかなかうまくいきません。