「システムは生き物であり、生物でもある」

中古バイク買取チェーン店の「バイク王」を運営するアイケイコーポレーションの実質的なCIOである小熊和弥情報システムグループマネージャー

　「システムは生き物であり、生物（なまもの）でもある」。中古バイク買取チェーン「バイク王」を運営する東証2部上場企業のアイケイコーポレーションで実質的なCIO（最高情報責任者）である小熊和弥情報システムグループマネージャーはこう言い切る。

　小熊マネージャーの言葉の真意は、企業を支えるIT（情報技術）も生き物のように企業ごとに個性があってしかるべきで、また、導入済みのITには旬の時期があるので常に進化を見据えて柔軟に動くべき、ということだ。だから、同社のIT環境をできるだけ内製化しようと心がけ、努力してきた。

　そんな信念を持つ小熊マネージャーは、システムエンジニアをおよそ7年間経験した後、看板をデザインする家業を継いでいた。アイケイコーポレーションの加藤義博代表取締役社長の知人だった小熊氏は、今から10年以上前の有限会社だった時代に同社の業務を外部から手伝い、やがて同社に入社したという経歴を持つ。

　アイケイコーポレーション情報システムグループの現在の人員数は10人。小熊マネージャーを含む全員で分担して、同社の各種システムの開発から運用、ユーザーサポートまですべて手がける。「当社のIT環境はすべて自分たちで作り上げ、IT部門も会社も一緒に成長してきた」と小熊氏は胸を張る。同社は自社サイトで中古バイクの見積もり額を計算できるようにしたり、お客様宅を訪問して中古バイクを査定して買い取る作業をPDA（携帯情報端末）で合理化したりするなど、業務のIT化に積極的だ。

　小熊マネージャー率いる情報システムグループがここ数年の間に特に力を入れてきたのは、サーバーとクライアントの仮想化である。「世間で『インターネットVPNは企業ネットワークとして使うには（通信の安定性に）懸念がある』といわれていた3年以上前に、インターネットVPNを自社で構築してクライアントの仮想化を始めた」と明かす。この挑戦のおかげで、通信コストやクライアントの保守コストを大幅に削減できた。リスクを恐れず大きな効果を期待できる新技術に果敢に挑む姿勢がよく分かるエピソードだ。

　また、同社は半年ほど前から、データベースサーバーのHDD（ハードディスク装置）をSSD（ソリッド・ステート・ドライブ）に置き換えた。「他社からは無茶に見えるかもしれない（笑）。でも、一般消費者向けパソコンではSSDが流行り出しているし、当社でも今のところちゃんと動き続けている。こうやって新しいことにどんどん挑戦できる環境を与えているので、ITスタッフのモチベーションが高い」という。

　さらに、最近はセキュリティー対策を一層強化するために、「性悪説ならぬ“性弱説”の発想で、情報システムグループや会社のみんなに『会社を守ろう』という思いを働きかけていきたい」と小熊氏は考えている。「会社は自宅で、同僚は家族。だから守りたい」という感覚を強く抱いてもらえるよう意識改革を促すことで、人為的な情報漏えいなどを防ぐ。対話を増やすことから始め、長期休暇をみんなが取れるよう仕事の分担を話し合ったり、働きやすい職場環境を整えたりしていくつもりである。

　アイケイコーポレーションの2008年8月期決算は、売上高が246億円で前年比20.7％増、営業利益は18億6000万円で同18.4％増だった。2009年8月期は、「バイク王」の全国100店舗体制を築き、年間で約16万台の中古バイクを買い取る計画を立てている。