米Googleは2009年6月9日(米国時間),米Microsoft独自の高価なメッセージング・サーバー「Exchange Server」からGoogleの安価なオンライン・アプリケーション(ただし,独自サービスであることに変わりはない)への移行を支援する「Google Apps Sync for Microsoft Outlook」と呼ぶツールをリリースした(関連記事:Outlookから「Google Apps」が利用可能に,Googleがプラグインを提供)。このツールは実質的に無料で使えるという点ではGoogleの慣例に従っているものの,ユーザーが自発的に導入して初めて機能する。正確に書くと,各ユーザーのパソコンで動作させる必要がある。

 このツールは,Microsoftの企業市場における稼ぎ頭の急所を狙う。そして,将来より自動化したツールを出すための布石となる。Googleの技術者であるEric Orth氏は「企業による『Google Apps』導入の大きな障壁をGoogle Apps Sync for Microsoft Outlookで破れるかと思うと興奮する。『Microsoft Outlook』を気に入っているユーザーはいるが,そうした人のためにGoogle Apps Sync for Microsoft Outlookを開発した」としている。

 Googleは,同ツールでOutlookを狙い撃ちにするという。企業ユーザーの大半がExchangeに馴染んでいるため,企業をExchangeから同社のサービスであるGoogle Appsに移行させるには,できるだけ操作感を変えないようにすることが重要である。このツールが与えられた役目をうまく果たせば,ユーザーはサーバー側の変更を全く意識せずにOutlookを使い続けられる。

移行支援ツールは実質無料で利用可能

 現在のGoogle Appsは,大きく有料版と無料版に分かれる。Google Apps Sync for Outlookを入手するには,厳密には有料サービスを契約しなければならない。ただし,有料サービスは誰でも試用できるため,実際のところ無料で入手可能だ。Google AppsはExchangeと同様のメール/アドレス帳/カレンダ/タスク管理機能を用意しており,文書作成/編集機能も備えている。こうした機能はすべてWeb上のサービスとして実現されているが,これらのExchange対抗機能はOutlookなどのパソコン上で動く従来型アプリケーションから使える。

 Google AppsはまだExchangeにとって大した脅威でない。だが,Exchangeの機能をコピーする無料ツールが,あらゆる規模の企業に受け入れられる可能性は十分ある。現在のような100年に1度と言われる経済状況ならなおさらだ。Googleによると,現在のGoogle Appsのユーザー数は数千万人で,年間売上高は数億ドルという。これらの数字に対し,Googleエンタープライズ事業担当社長のDave Girouard氏は「採算が取れているし,成長している」と述べた。

 Google Apps Sync for Microsoft Outlookの詳細については,GoogleのWebサイトをご覧いただきたい。

Windows IT Proに掲載した筆者の「What You Need to Know About Google Apps」とMichael Otey氏の「Features of Google Apps」も参考になる。