楽天出身で、旅行SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手フォートラベルの創業者である津田全泰氏は今、新会社ヨセミテを設立し、医療関連などの公共サービス系SNSの開発・運営に取り組んでいる。2009年6月中には、ボランティアを対象にしたSNS「4good」も開設する。公共サービスに焦点を当てる理由やヨセミテ設立の経緯などを聞いた。(聞き手は島田昇=日経コンピュータ

「4good」とは、どのようなサービスか。

 数千万人いるとされる寄付活動やボランティア活動に興味のある人を対象としたSNSだ。4good上で発言するなどの活動をすれば、仮想通貨ポイントである「good」が貯まっていく。ただ、goodは活動した本人ではなく、友人など他人にしか使えないのが特長だ。いわゆる「グリーン」と呼ばれる分野のサービスで、4goodはグリーンSNSの一種だといえる。

 これまでに、医療関連SNSである「みんなの闘病サイト オンライフ」を開設してきた。オンライフには、難病に苦しむ人や家族の闘病日記などが掲載されている。相談したくても相談相手がいないという患者やその家族が、悩みを共有するためのコミュニケーションを支援するためのサービスだ。

 いずれのサービスも、CGM(消費者生成メディア)だと考えており、ヨセミテはCGMを開発・運営することを目的にした会社である。

なぜ最初に医療分野に着目したのか。

 医療分野というよりも、公共サービスに着目した。

 私自身が「Yahoo!」のような総合型のサービスよりも、「Amazon」のような特化型のサービスを複数使っていることから、サービスを提供するなら特化型で一番になることを目指そうと決めていた。そこでインターネット世界の“声”に耳を傾けてみると、医療や、教育、ボランティアなどに関するネットサービスが少ない。一方で、エンターテインメント関連の分野にはベンチャーが入り乱れている。

公共サービス分野は新規参入しづらいからチャンス

 「これは、なぜだろう」と調査した結果、医療や教育などは公共サービスに位置づけられ、国が税金を配分して管理・統制する分野だった。法規制もあるし、消費者自身が「消費者である」という意識を持たないことも多い。つまり、万人が使うサービス領域でありながら新規参入しづらい分野ということだ。これはチャンスだと考えた。

 海外では既に、患者向けSNSの「patientslikeme」のようなサービスが人気になっている。こうしたサービスは、「ヘルスケア2.0」や「エデュケーション2.0」とも呼ばれており、そこにはベンチャーキャピタル(VC)が投資する流れも起きている。

医療分野は高齢者需要が高く、ネットサービスには不向きなのでは。

 海外では全くそんなことはない。オンライフでも、がんや難病指定されているような一生付き合っていかねばならない病気、場合によっては死んでしまう病などとの闘病にテーマを特化させている。これにより、日本で1人あるいは1万人に1人といった病との闘いに苦しむ人たちのつながりが実現できる。そこにはネットリテラシの問題を超える需要がある。

オンライフなどのビジネスモデルは。

 広告配信モデルが基本だ。徹底的に消費者が望むサービスにすることで利用者を集め、属性分けした利用者に対し広告配信などができるプラットフォームとして提案する。

怪しい健康食品販売業者などが群がってこないか。

 そこはきちんと締め出す。西洋医学、東洋医学など線引きが難しいところはある。だが、そこは利用者と相談しながら環境を整える。我々だけの専門知識では限界があるし、そもそも企業側からすべての情報を発信したり、ルールを整えたりする時代でもないだろう。

4goodが対象にするボランティアへの若者の興味は、ブームで終わるのではないか。

 グリーンの分野への人々の興味は、一過性のものではないと考えている。実際、「コーズマーケティング(社会貢献活動マーケティング)」という言葉もある。企業からの広告料を原資とする4goodは、金銭経済と非金銭経済をつなぐ存在になれると考えている。