「類似した複数の業務を見比べると,仕様の抜けを見つけられる」。こう話すのは,エレクトロニクス製品を扱う商社,丸文の情報システム会社である丸文情報通信で,販売管理システムなどの構築に携わる酒井貴志さん(システム統轄部 スペシャリスト)だ。酒井さんは,ヒアリングの内容を,業務フロー図に整理した上で仕様の抜けがないかを確認している。類似した業務は業務フロー図に整理して見比べる。

 例えば,複数の営業部門の担当者が利用する販売管理システムを担当したときにも,酒井さんは仕様の抜けに気づけた。各部門の担当者にヒアリングをした内容を業務フロー図に整理したところ「注文書受付」という作業の後に「受注承認」がある部門とない部門があることが分かった。

 「類似している業務なので,受注承認があるはずだ。ひょっとしてユーザーが言い忘れているのかもしれない」と酒井さんは考えた。そこで「受注承認」がない部門のユーザーに改めて,「そちらの部門では,受注承認はしないのですか」と,詰めの質問を投げかけた(図1)。その結果,ユーザーが受注承認を酒井さんに伝え忘れていたことが判明。受注承認がないという仕様の抜けを防げた。

図1●類似業務を比較して聞く例<br>丸文情報通信の酒井貴志さんは,類似した業務を実施している部署の業務フローを比較することで,仕様の抜けがないかをチェックしている。一方に含まれていない業務があると,その業務がないかどうかを質問して仕様を詰めている。業務フローは同社で標準の「Process Flow Diagram」という図にまとめている
図1●類似業務を比較して聞く例
丸文情報通信の酒井貴志さんは,類似した業務を実施している部署の業務フローを比較することで,仕様の抜けがないかをチェックしている。一方に含まれていない業務があると,その業務がないかどうかを質問して仕様を詰めている。業務フローは同社で標準の「Process Flow Diagram」という図にまとめている
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