ユーザーとのヒアリングでは大抵の場合,通常の業務の流れを順番に聞くだろう。ただ,そこで「抜け」になりやすいのが,通常の流れに乗らないケース,つまり例外的なケースだ。そうした例外を聞き出すコツは,「順番が逆のケース」を聞くこと。これを実践しているのは,エス・ディ・アイの佐藤さんである。佐藤さんは業務処理の流れを確認した後,順番が逆になるケースがないかを,必ずユーザーに質問している(図1)。

図1●順番が逆のケースを聞くことで仕様の抜けをなくせた例<br>システム・コンサルティングを手がけるエス・ディ・アイの佐藤正美さんは,業務の順番に関する仕様を詰めるために,「順番が逆のケース」がないかを常に質問している
図1●順番が逆のケースを聞くことで仕様の抜けをなくせた例
システム・コンサルティングを手がけるエス・ディ・アイの佐藤正美さんは,業務の順番に関する仕様を詰める
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 例えばある企業で販売管理システムについてヒアリングをしたとき,商品の出荷後,代金を請求していることが分かった。佐藤さんはその場で,「代金を請求した後,出荷するというケースは一切ないのですか」と詰めの質問をした。すると年に数社と限られてはいるものの,代金を請求した後,出荷するケースがあることが分かった。請求後に出荷するケースを仕様に盛り込むことができ,仕様の抜けを未然に防げた。

 オーサスの後藤さんも,「商品などの代金が入金された後,月次の会計処理を行う場合に,順番が逆になるケースを聞いて効果があった」と話す。具体的な質問は,「入金が月次処理に間に合わない場合があるのか」というものだ。もし入金が間に合わないケースがあれば「処理を次の月に持ち越すのかどうか」と,より踏み込んだ質問ができ,例外を聞き出せて仕様の抜けを防げる。