ヒアリングの場で,業務部門のユーザーは「どのタイミングで処理を行うのか」まで話してくれることは少ない。だが処理のタイミングについて認識にズレが生じてしまうと,システムの出来は格段に悪くなる。実際,タイミングをきちんと押さえていないと,「システムで管理している商品の数量データが実際と合わないといった問題が起き,現場が混乱してしまうことがある」と,クオリカで流通業などのシステム開発を手がける柴原久佳さん(ソリューション事業部 リテールソリューション部 開発グループ プロジェクトマネジャー)は指摘する。

 柴原さんは処理のタイミングに注意しながらヒアリングを実施している。そこで役立つのは,ヒアリングの場に置いてあるホワイトボードに図解することだ。

 ある外食チェーン店の本部で販売管理システムに関するヒアリングをしたときにも図解が役立った。業務部門のユーザーは「商品を拠点間で移動したときに在庫情報を変更します」と言った。すると柴原さんは「在庫情報を変更するという点について,確認させてください」と言いながらホワイトボードに向かう。二つの拠点間で商品が移動する状況をまず図解。各拠点で在庫として管理している商品の数とその変化を書き足しながら「在庫情報をどのタイミングで変更しますか」という,詰めの質問をした(図1)。

図1●図解しながらタイミングを聞くことで認識のズレをなくせた例<br>流通業などのシステム開発を手がけるクオリカの柴原久佳さんは,ホワイトボードに図解して在庫情報を変更するタイミングを聞き,ユーザーが言っていることに対する自分の認識に,ズレが出るのを防ぐことができた
図1●図解しながらタイミングを聞くことで認識のズレをなくせた例
流通業などのシステム開発を手がけるクオリカの柴原久佳さんは,ホワイトボードに図解して在庫情報を変更するタイミングを聞き,ユーザーが言っていることに対する自分の認識に,ズレが出るのを防ぐことができた
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 図を見ながら質問を聞いたユーザーは,すぐに「移動し終わったときに在庫情報を変更します」と返答。図解することで処理のタイミングにまで議論が深まり,その内容を仕様に盛り込むことができた。仕様に書かれていなければ,開発側で勝手な解釈が行われる可能性がある。認識のズレを防げた一場面だった。