手戻りを招く「仕様の認識のズレ」や「仕様の抜け」。これらは質問のコツをつかんでいれば回避できる。システムの出来も見違えるはずだ。

 業務部門にいるユーザーにちゃんとヒアリングをしてシステム開発に着手した。それなのに開発が大詰めを迎えたとき「欲しかったのはそういう機能ではない」「このケースの処理がシステムに組み込まれていない」といった不満がユーザーから出てきた──。

 仕様の詰めが甘かったために,開発作業の手戻りを余儀なくされることは少なくない。ユーザーが仕様をITエンジニアに伝え忘れていたことで仕様の詰めが甘くなったとしても,「あらかじめユーザーと約束した日までにシステムを稼働できなければ,ITエンジニアの責任になってしまう」と,NTTドコモ 情報システム部の坂本守さん(基盤システム担当部長)は指摘する。

 仕様の詰めが甘くなるのは,ITエンジニアとユーザーとの間の「認識のズレ」と,盛り込むべきはずの仕様が含まれていない「仕様の抜け」の二つが主な原因だ(図1)。

図1●ユーザーへのヒアリングの場面で仕様の詰めが甘くなるケース<br>ITエンジニアがユーザーへのヒアリングをする場面で,ユーザーが話した内容に誤解やあいまいな部分があったり,ユーザーが言ったこと以外に注意を払わなかったりすると,仕様の詰めが甘くなり,「 認識のズレ」や「仕様の抜け」が出てくる
図1●ユーザーへのヒアリングの場面で仕様の詰めが甘くなるケース
ITエンジニアがユーザーへのヒアリングをする場面で,ユーザーが話した内容に誤解やあいまいな部分があったり,ユーザーが言ったこと以外に注意を払わなかったりすると,仕様の詰めが甘くなり,「 認識のズレ」や「仕様の抜け」が出てくる
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 では,どうすればそれらを回避できるのか。ヒアリング経験の豊富なエンジニアへの取材を通じて見えてきたことは,質問のやり方次第で認識のズレや抜けを回避できる,ということだ。しかも,それらは難しいものではなく,誰にでもすぐに実践できるものばかり。そうした質問術を本特集では九つのコツとして紹介する。