ヒアリングの場でユーザーが話した内容を,ITエンジニアが自分なりに言い換えて質問するのも,認識のズレを防ぐのに有効だ。

 ウルシステムズでシステム・コンサルティングを手がけている村上歴さん(シニアコンサルタント)は「ヒアリングの場でユーザーから『~を確認する』『~をチェックする』『~を管理する』『~を調整する』といった,イメージをつかみにくい言葉が出てきたときには,必ず言い換えて質問している」と話す。

 「~を確認する」という言葉を例に,村上さんの実践例を紹介しよう。ある企業の勤怠管理システムの開発で,村上さんは業務部門のユーザーにヒアリングをした。すると,ユーザーから「承認者が残業実績登録の内容を確認する」というシステムに関する仕様が出てきた。

 そこで村上さんは「それは『その月の残業実績と,事前に社員から提出された超過勤務の申請時間を承認者が比較して,超えていないかどうかを確認する』ということですね」と,言い換えて聞くという詰めの質問をした。

 ここまで詳しく言い換えたのは,超過勤務の申請データを検索して表示させる機能まで,仕様に盛り込む必要があるかどうかを,村上さんは見極めたかったからだ。

 そのときは「超過勤務の申請データと比較するといった,面倒なことはしません。その社員がその月どれくらい残業したかを確認するだけです」という回答が得られた。村上さんの想定していたことは含まれないことがはっきりした。つまり,認識のズレを回避できたと言っていいだろう。