経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 前回(第15回)では、私が“システム屋”と呼ぶ情報システム構築にかかわる人が「コンサルタントになりたい」という時には、何らかの逃避願望が隠されているのではないか、という問題提起をしました。コンサルタントに仕事を依頼するユーザー企業にとっては、逃避願望を持つダメなコンサルタントにだまされないように注意する必要があります。

 今回は、そもそも情報システムに関連するコンサルティングには3つの分野があることを確認しておきます。すなわち、1.「今の情報管理体制や採用技術などが適しているのか」といったシステム・コンサルティングと呼ぶべき分野、2.「業務をどう変えるべきか」といった業務コンサルティングに類した分野、そして3.「何を情報化すべきか」といった方向の経営コンサルティングに近い分野、という3つがあります。コンサルタントに仕事を依頼する場合は、この3つの違いをよく念頭に入れておく必要があります。

 専門的なスキルと経験を蓄積すれば、1.であれば、例えば「情報セキュリティー」とか「ネットワーク安全性」「災害対策、事業継続」「内部統制」など、対象を絞り込んだ専門家を目指すことで、比較的経験年数が短くともコンサルタントとして活躍しやすいと思います。

 一方で、3.の分野のコンサルタントは「日本全体に何人いるか」という人たちです。米国でMBA(経営学修士)を取ったから、といった理由だけでなれるものでもないでしょう。