100年に1度の経済危機の中で,ネットブックは依然として好調な売れ行きをみせている。そのネットブック市場で圧倒的なシェアを占めているのが米Microsoft社のWindowsである。だが,ネットブック市場の拡大はMicrosoftにとって,必ずしも歓迎できることではないようだ。

Take1:オジー氏,クラウド・コンピューティングとネットブックで放言

 米Microsoftのチーフ・ソフトウエア・アーキテクトであるRay Ozzie氏はカリフォルニア州で開催されたビジネス・フォーラムにおいて,同社のクラウド・コンピューティングに対する取り組みを自慢し,米Googleが2009年5月28日(米国時間)に発表した新サービス「Google Wave」をこき下ろした(関連記事:Google,コミュニケーション手段の集約サービス「Google Wave」を発表)。

 同氏は「(Waveは)現在の私が守っている『複雑さはWebの精神と相いれない』という大原則に反する」と話したのだ。この発言は,筆者がWaveのプレビューで述べたコメントとそっくりで興味深い。筆者は「Googleの各種サービスはUNIX譲りの簡潔さを備えているのに,Waveはこれらの既存サービスと全く違う」点を指摘した。Ozzie氏はクラウド・コンピューティングの最終目標として「物事を単純にしつつ境目をなくすこと」を挙げ,「複雑さを増してはならない」としている。

 Ozzie氏はネットブックについても触れ,「実際問題,私はネットブックがどのような物なのか知らない。ただのノート・パソコンじゃないか」とした。とりあえず「このような人物がMicrosoftで技術面の舵取りをしている」とだけ書いておこう。

Take2:ネットブックを恐れるMicrosoft

 Microsoftは,「ネットブック」という呼び名が消費者にとって単純すぎるとの理由で,ネットブックに対してもブランド名作りの才能を発揮しようとしているらしい。この種の低価格デバイスを「Low-Cost SMall notebook PC(LCSMPC)」(低価格小型ノート・パソコン)と呼ぶつもりなのだ。筆者の冗談ではない。

 そのように呼びたい理由は理解できる。たいていの場合ネットブックは低価格パソコンとして利用されるし,Webサーフィン以外の用途にも使われる。しかし,ちょっと待て。分かりやすい上によく知られた呼び名を,あのように複雑で舌をかみそうな名前に変えるなんて……何というか……困ったものだ。

 それにしても,なぜMicrosoftはこんなことを企むのだろうか。理由は簡単で,Microsoftはネットブックを恐れているのだ。ネットブックが現在のパソコン業界における希望の星である一方,売れれば売れるほど同社の実入りは減る。というのも,各ネットブックに「『very』Low-Cost Windows Version(LCWV)」(超低価格版Windows)が付属するからである。

 次期クライアントOS「Windows 7」のローエンド・エディション「Starter」を取り巻く圧力が続けば,同社はStarterの提供打ち切りに追い込まれるかもしれない。同社はそのようなPC市場など想定していない。同社が何年も前に「パソコン・フード・チェーン」のトップまで登り詰めた時代とは,全然違う未来だ(関連記事:Windows 7の登場で200ドルPCが可能になる)。