Windows Vistaについて回った長い遅延と不安を考えると,Windows 7の開発サイクルは,これまでのところ驚くほど順調だ。むしろ「迅速に進んでいる」と言ってもいいだろう。Microsoftは2008年10月,唯一のWindows 7プレベータ版を外部テスター向けにリリースし,その後,2009年1月に唯一のベータ版を一般向けに出荷した。そして,4月末から5月最初にかけて,Windows 7の1度きりとなるリリース候補(RC)版を公開した。このRC版は,ユーザーがMicrosoftの今後の方向性を評価できる最後のチャンスである。Windows 7のRC版について知っておくべきことを紹介しよう。

RC版を公開する意味とは?

 このRC版は,Microsoftの次期デスクトップOSにおける,正式発売前の最後のマイルストーンとなる。Microsoftは今後,システムが一定の条件下で正常に動作するのを妨げるいわゆる「ショーストッパー」バグなど,特定の問題を取り除くための修正のみを同OSに対して加える。RC版から最終版(いわゆるRTMと呼ばれる製造工程向けリリース)までの数カ月は,Microsoftのパートナおよびカスタマが,同OSの一般公開に向けて準備するためだけに存在しているのだ。Microsoftによると,この期間中,Windows 7は事実上ロックダウンされ,「ごくわずかな修正点」のみがコードに追加されるという。

 MicrosoftはWindows 7ベータ版について,「feature complete(基本機能がすべて揃っている)」と表現した。つまり,Windows 7の最終版に搭載されるであろう機能の大半が,ベータ版に含まれていたということだ。同社はその後,パブリック・ベータ版をテストしたユーザーから,前例がないほど大量のフィードバックを受け取り,RC版にいくつかの変更を施した。これらの変更点には,機能面でのいくつかの大規模なアップデートから,ユーザー・インタフェースの細かい調整まで,さまざまなものが含まれる。その中でも特に興味深いものを,以下に紹介する。

●Internet Explorer 8.0を削除できるようになった:欧州連合(EU)の独占禁止規制当局による提訴の可能性を受けて,Microsoftは,標準のWindows Featuresユーザー・インタフェースからInternet Explorer (IE) 8.0を削除できるようにした。現時点では,この機能が欧州で販売されるWindows 7に限定されたものなのか,それとも,すべてのバージョンのWindows 7に搭載されるのか,明らかではない。

●ユーザー・アカウント制御(UAC)を変更:Microsoftは,Windows 7でUACがユーザーの承認を求めるプロンプトを表示する頻度を少なくした。だが,ベータ版が一般公開された後,テスターは一部のUACの機能に関して,不満を抱いた。そこで,RC版ではUACのコントロール・パネルは,高い権限を持つユーザーの承認が必要なプロセスとして動作するように変更された。このため,ユーザーは,認証を求めるUACのプロンプトに答えてからでないと,UACの設定に一切変更を加えられないようになった。さらに,ユーザーは実際にUACのセキュリティ・レベルを変更(Vistaには搭載されていなかった機能)する際も,再度,認証を求めるUACのプロンプトに答える必要がある。

●デスクトップの変更:Windows 7のデスクトップは,Vistaのものを簡略化し,視覚効果を高めた改良版だ。RC版では,ユーザーからのフィードバックを踏まえて,新しいAero Peek効果をWindows Flip([Alt]+[Tab]キー)のポップアップ・ウィンドウ内のオプションにした。Windowsキーは,パワー・ユーザーを対象とする新しいキーボード・ショートカットで強化された。タスクバーのボタンを点滅させることで「ユーザーの注意を引こうとする」アプリケーションは,前よりも目立つようになっているため,ユーザーはおそらく気付きやすくなるだろう。タスクバーの表示解像度が向上し,一度に表示できるアイコンの数が増えた。Windows 7の新しいテーマのサポートは使い勝手が向上しており,ユーザーが変更した設定内容を失うことも少なくなった。