2009年4月中旬,携帯電話業界の国際団体である「GSMアソシエーション」(GSMA)の幹部数名が来日した。

 GSMAは,欧州を中心に普及したGSM(global system for mobile communications)方式の推進団体が母体だが,その発展システムであるWCDMAやLTE(long term evolution)もカバーしており,日本からもNTTドコモやソフトバンクモバイルが理事会メンバーとして名を連ねている。多くの日本の関係者が参加する世界最大の携帯電話関連の展示会「Mobile World Congress」の主催者でもある。

 彼らから見た日本の印象は,「2000年以降の数年間は世界に積極的にアピールしていたのだが,ここ5年くらいは沈黙したまま」だという。彼らが日本の最新事情を知らないわけではない。日本から火がついたモバイル・インターネットのその後の発展やモバイルによる決済サービスの突出ぶりは,彼らにとっても目を見張るものだという。にもかかわらず,国際舞台に誰も出てこないので,見えない存在になっているとの指摘だ。彼らにはその理由が分からないと言い,溝を埋めることが今回の来日の理由の一つでもある。

 一方で,アジア諸国は存在感を高めているという。昨年GSMAがマカオで開催したモバイル向けサービスのコンテストでは,韓国や中国,フィリピンの企業が上位を占めた。日本からは,応募者すらほとんど無かったという。

 組織名に欧州を連想させる“GSM”という名称がついていることが,日本人が関心を持たない理由かもしれないと彼らは分析する。それはともかく,世界は,“モバイル先進国”である日本の存在感の高まりを期待しているようだ。