過去2回の連載でお伝えした財務本部長との戦い方は、机上の空論では無く、私自身の体験に基づく手法です。ただし問題は、誰にでも私と同様の交渉やプレゼンテーションができるのか? という所にあります。

 私は、新入社員の時代から自分の思った事は、相手が誰であろうと発言しないと気が済まない性格でした。加えて、10年以上前からIT(情報技術)投資や経営改革に関する講演を100回以上も行っていますので、手前味噌ですが、どなたを相手にしても同じスタンスで対処できます。

 しかし、誰もが私と同じように遠慮容赦の無いプレゼンテーションや交渉を目上のそれも役員に対してできるものではありません。これは一般社員であっても、管理職であっても、役員であっても同じ事がいえます。

 ところが、部下が増え組織の責任者となった暁には、誰しもその部門の代表として、自部門の主張を堂々と展開しなければならないという宿命を背負います。性格のせいにして堂々たる主張ができないと、部下に尊敬されない、何とも情けないダメな上司になってしまう危険性があります。

 本人の資質の問題は非常に重要なのですが。これについてアドバイスできる事はそれほどありません。私の友人で、自分の資質に悩んでプレゼンテーションセミナーに自費で参加した人物がいるのですが、全く効果が無いとは言いません。が、資質を変えるというまでには至らなかった事を記憶しています。

 しかし、企業に勤める者として、自分の欠点を補うために自費でセミナーに参加するという自己啓発精神には感心します。私など、物心付いたころから習い事(そろばんや習字など)や学習塾には一度も行った事が無く、自己啓発という言葉は私の頭の中には存在しませんでした。

 その因果か、サラリーマンになってからは、会社の命により研修やビジネススクールに無理矢理行かされるケースが多く、「何で俺だけが…」と真剣に悩んだこともありましたが、今考えてみますと、海外子会社の社長を務められたのも、一部門に偏らず、すべての部門のオペレーションを管理する事ができたのも、多くの研修やセミナーで体得した“条件反射”の蓄積があったからではないかと思えてきます。