経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 前回(第14回)前々回(第13回)では、“システム屋”がよく使う「ソリューション」という言葉について解説しました。似た言葉として「コンサルティング」という概念があります。今回はこれについて考えてみたいと思います。

 システム会社に所属したり、就職したりしようとする若い人の多くが、コンサルティングをやりたい、コンサルタントになりたいと考えているようです。

 コンサルタントには広く深い経験が必要ですから、若い人が「将来やりたい」と考えることは健全です。しかし「今すぐやりたい」と思う裏には何らかの逃避願望が隠されていると私は見ています。

コンサルタントを目指しても失敗する3つの動機

 逃避願望その1は、自分が”システム屋”に向いていないことに気づき、情報システムの設計・開発業務などから逃避したいと思うケースです。あらゆる現象を洗い出す論理的思考力や、いかなるミスをも逃さない緻(ち)密さ、システム性能などを定量的に評価する姿勢といった、“システム屋”が備えるべき資質を自分は持っていないことに気づいた人が、コンサルタントを志望します。当然の帰結として、それは失敗に終わります。

 逃避願望その2は、上司や会社からの逃避です。「あんな上司の下ではやってられない」「この会社では出世できない」といった思いが引き金になります。さらに、ほかのシステム会社に移っても大同小異だという現実に気づくと、個人プレーができると思われるコンサルタントを志望するようになるのです。もちろん、この選択も失敗に終わります。

 逃避願望その3は、目の前のユーザー・顧客からの逃避です。ユーザー企業の発言力が強く、自分たちは常に言われたことを実現するだけの役割にとどまっており、この関係は組織と組織の間に組み込まれてしまったものであり、自分1人ががんばってもどうしようもない。それなら会社を辞めたり職種を変えたりしてコンサルタントとして“再デビュー”し、自分が一からユーザーとの関係を築けばよい。こう考えるのです。

 このケースも成功しません。成功するとすれば、自分が会社を辞める、あるいはそのユーザー企業担当から外れるという時に、ユーザー側から「辞めないでください」と懇願されるような場合に限られます。