中国で“Ruby熱”が高まっている。2009年5月22日,上海で,中国で初のRuby会議「RubyConf.China2009」が開催された。Matzことまつもとゆきひろ氏が基調講演を行い,約450名の参加者が集まった。中国でのRuby活用事例などの講演もあった。

RubyConf.China2009のポスター
RubyConf.China2009のポスター
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「Matz大神」を熱烈歓迎した中国のRubyist

 RubyConf.China2009の企画・運営を行ったのは,中国のソフトウエア開発者コミュニティであるJavaEyeと,同じく中国のRuby On Railsコミュニティである上海 on Railsである。上海のIT企業であるEkoheと,筆者の企業天狗ソフトがメインスポンサーとして,企画段階から参画した。RubyConf.Chinaは,米国のRubyConfおよび日本Ruby会議とは独立して企画・運営されている。

 RubyConf.China2009の会場となったのは,上海南駅近くの光大会議中心。開会時間の9時直前に現れたまつもと氏を,450名の聴衆による拍手と歓声,無数のデジカメのフラッシュが迎えた。

RubyConf.China2009の会場
RubyConf.China2009の会場
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 まつもと氏は「Why Ruby?」と題して講演。英語100枚のプレゼンテーション資料を使って日本語で話し,逐次通訳がまつもと氏の日本語を中国語に訳していく。このような複雑なプレゼン経験はまつもと氏も初めてとのこと。ムーアの法則から始まり,よい自然言語とは?というやや概念的な内容から,いいコンピュータ言語の条件について様々な例を示しながら,話していく。Rubyの開発のきっかけや,発展の歴史,ビジネスユースに関しての知見など豊富な内容を一気に論じ,最後は「Enjoy Programming」というスライドで締めくくった。直後,満場の拍手と,デジカメのフラッシュが会場を包んだ。

RubyConf.China2009で基調講演を行うまつもとゆきひろ氏
RubyConf.China2009で
基調講演を行うまつもとゆきひろ氏
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・まつもと氏の講演資料「Why Ruby?講演ビデオ

 講演終了後,人々がまつもと氏を囲む。まつもと氏の著書にサインを求める若いエンジニア,一緒に写真をとる企業経営者,質問しようと英語で話しかける学生,まつもと氏の前に人々は列をなし,一時収拾がつかない事態となった。やがて地元メディアのインタビューに応えるためまつもと氏は控え室に移動した。

基調講演を終えたまつもと氏を取り囲むRubyConf.China2009の参加者
基調講演を終えたまつもと氏を
取り囲むRubyConf.China2009の参加者
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 この姿を見た,ある中国人エンジニアは,「ロックスターみたいだ」と感想をもらした。翌日,複数のBlogに,「Matz大神」という文字が現れた。「神様Matz」くらいの意味であろう。

 終始笑顔で応えているまつもと氏のフランクな態度は,中国のエンジニアを魅了したようだ。会終了後,上海 on RailsのWebサイトには「彼は人を心地よくさせる」,「人柄が素晴らしい」,「Matzに会って,Rubyを勉強すると誓った」という意見が書き込まれた。

 Twitterでも,まつもと氏の登場と同時に会場の聴衆からの書き込みが始まった。まつもと氏の講演で最も反応があったのは「Rubyは日本のバブル経済が崩壊し,当時会社勤めはしていたものの,プロジェクトがなく時間をもてあましていた時,自分のために開発を始めたことがきっかけだった」という部分だ。

 「ということは,10年後にはRubyに変わる言語が中国から生まれているかもしれない!」,「不況の時期に,新しい技術が生まれるというのは事実だ。これから新しい技術が生まれるかもしれない」,「仕事がない時期に,この言語を開発したMatzは天才だ」---講演とリアルタイムでTwitter上にこのような書き込みが複数見られた。